《社説②・12.11》:迷走の韓国政局 党利党略の異常な空白だ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・12.11》:迷走の韓国政局 党利党略の異常な空白だ
韓国の捜査機関が尹錫悦大統領の捜査を始め、立件の可能性が高まっている。「非常戒厳」の宣言を巡る内乱や職権乱用の容疑だ。
与党「国民の力」の韓東勲代表は早期退陣を求めた上で、国政を韓悳洙首相と共に運営する方針を示している。
包囲網が狭まり、尹氏自身が政権を担う力は失われている。韓国の内政や外交は機能不全に陥りつつある。政治空白の解消には、尹氏が早期に辞任を受け入れることが避けられない情勢だ。
大統領には「不訴追特権」があるが、内乱罪は例外に当たる。刑法は憲法秩序を乱す目的で暴動を起こした場合に内乱罪を適用すると規定し、首謀者には死刑または無期刑を科すと定める。
尹氏は国政運営の行き詰まりを理由に戒厳令を強行。憲法が要件とする戦時や国家非常事態には当たらない権力の乱用だろう。
なぜ理解しがたい暴挙に出たのか、真相究明が欠かせない。民主主義を危険にさらした法的、政治的責任は免れない。
韓代表は「(尹氏が)外交を含む国政に関与しない」と表明したものの、首相が大統領の職務を代行する法的根拠は明確ではない。違憲と指摘され、尹氏が本当に権限を委譲するかも分からない。
憲法は、大統領が欠員や事故で職務遂行できない場合に首相が代行すると定める。現状は「事故」とは言えず、与党が関与する根拠も乏しい。
代行する首相が国防上の権限を行使できるか、不透明な事態が続く恐れもある。国防省は軍の統帥権が「法的には大統領にある」としている。尹氏は直近でも行政安全相の辞任を裁可して人事権を行使している。今後も国政に口出ししない保証はない。
与党の対応は、尹氏の排除をアピールして収拾し、時間稼ぎを図ったと見られている。党勢を回復する間がないまま大統領選に至れば、最大野党「共に民主党」が政権を奪うとの見方が支配的だ。党利党略で政治的な混迷を長期間放置していては、国民への責任を果たしているとは言えない。
弾劾訴追案は与党の投票放棄で一度は廃案になったが、共に民主党は可決まで何度でも提出する構えだ。政府提出の予算案や法案が成立するめどは立たない。
尹氏は談話を発表し、自身の任期を含めた政局安定策を与党に一任すると表明した。弾劾と捜査が並行する異常事態である。自ら責任を持って進退を判断すべき時ではないか。
元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月11日 09:30:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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