【社説①・12.11】:規正法再改正 抜け穴残さぬ根本改革を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・12.11】:規正法再改正 抜け穴残さぬ根本改革を
衆院の政治改革特別委員会が開かれ、政治資金規正法の再改正に向けた議論が始まった。
与野党がさまざまな法案を提出している。今の制度のどこが問題で、それを改めるにはどうしたら良いのか、しっかり話し合い、合意形成を図るべきだ。
自民党案は改革の本丸である企業・団体献金の扱いを盛り込んでいないばかりか、使途公開義務がない政策活動費の廃止にも例外規定を設けた。またしても抜け穴が残る内容だ。
野党は政策活動費の全廃や、企業・団体献金の禁止の法案を提出した。抜本改革をこれ以上先送りしないためにも野党案を軸にまとめるのが筋である。
年内は審議日程があまり残されていない。裏金の実態解明も停滞したままだ。中途半端な形で拙速に収めようとせず、熟議を徹底しなければならない。
きのうの特別委で自民党議員は政策活動費の廃止を含む自民党案について「国民の疑念、不信感に真正面から応えた」と訴えた。だが非公開支出を一部認めたのは極めて分かりにくい。
しかも「要配慮支出」としていたその名称を「公開方法工夫支出」に改めたのも解せない。見せかけだけの取り繕いは国民を軽んじる対応だ。
ブラックボックスを残せば、その枠組みは際限なく広がる恐れがある。第三者機関に非公開の妥当性を判断してもらうと言っても、それが厳正な審査だったか国民は検証しようがない。
何より問題なのは、自民党の言う「外交上の秘密」や「企業の営業の秘密」が具体的にどのようなものを指すのか、はっきりしないことだ。
政治活動を「国民の不断の監視と批判の下」に置くのが政治資金規正法の主眼である。不透明な例外は残すべきではない。
企業・団体献金の禁止について石破茂首相はきのうの衆院予算委員会で憲法21条が定める表現の自由に抵触すると述べた。
企業の政治活動の自由を認めた1970年の最高裁判決も、金権腐敗の弊害を「立法政策」で制限することは可能との見解を示している。「抵触」は言いすぎではないか。
先日の予算委では94年の政治改革で「企業・団体献金がなくなるとの意識を持った者は自民党にはいない」とも語った。しかし当時自民党総裁だった河野洋平氏は「廃止することで合意できた」と証言している。歴史のすり替えは許されない。
企業・団体献金の禁止は30年来の宿題である。これを外した法改正は改革の名に到底値しないことを肝に銘じるべきだ。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月11日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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