【社説①・03.01】:旧安倍派の裏金 幹部の責任逃れ許されない
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・03.01】:旧安倍派の裏金 幹部の責任逃れ許されない
違法性を認識して一度は中止した政治資金の還流は、なぜ、誰が主導して再開したのか。
自民党旧安倍派の組織的な裏金作りについて、会計責任者と派閥幹部らの主張の食い違いが鮮明になった。改めて国会の場で、幹部らに責任のある説明を求める。
同派の会計責任者だった松本淳一郎氏が、衆院予算委員会の参考人聴取に対し、政治資金パーティー券の販売ノルマ超過分の還流再開は2022年8月の幹部会合で決めたと証言した。
超過分の還流と政治資金収支報告書への不記載について、松本氏は19年に同派事務局長に就く前からの「慣例」で、安倍晋三元首相が22年4月に還流中止を決めたと説明。同年8月に西村康稔、世耕弘成、下村博文、塩谷立の幹部4氏による会合で再開が決まったとした。
昨年の衆参政治倫理審査会で、塩谷氏以外はこの幹部会合で結論は出なかったと説明していた。これに松本氏は「率直に不思議だなと思った」と疑問を呈した。
還流再開を求めた幹部は誰かを問われ、松本氏は「今は現職ではない」と初めて明言した。他の関係者の供述から、現在落選中の下村氏だとみられるが、当人は「いつ誰がどこで復活させたのか分からない」と言葉を濁す。松本証言の明確さとは対照的である。
政治資金規正法違反の罪で松本氏を有罪とした東京地裁判決は、「派閥会長や幹部らの判断に従わざるを得ない立場にあった」と認定した。還流再開には誰も異を唱えなかった、とも松本氏は聴取で述べている。
裏金化の再開を決める場にいた幹部4人の政治責任は一層明確になったといえよう。
政倫審では真実が解明されなかった以上、偽証罪が適用される証人喚問が必要ではないか。
問題が根深いのは、派閥ぐるみで違法性を認識しながら、止める動きがなかったことだ。
当事者意識の欠如は、事件の発覚後、不正の核心を解明しないまま、甘い調査と処分で、問題を矮小(わいしょう)化しようとした自民執行部らの姿勢にも現れた。
慣行だったという裏金化は、少なくとも森喜朗元首相の派閥会長時代に行われていたとされる。岸田文雄前首相は形だけの電話聴取で済ませたが、国会でただす必要があろう。
石破茂首相の対応も真剣さを欠いている。きのうの衆院予算委でも「再調査は行う考えはない」とし、人ごとのような答弁を繰り返した。今国会で野党が求める企業・団体献金の禁止にも反対姿勢を崩さない。
不祥事を生み続ける自民の体質にメスを入れることなく、国民の政治不信はぬぐえまい。個別の政策では距離が目立つ野党も、ここは結束して真相を究明し、抜け穴だらけの政治資金の規制強化を進めるべきだ。
元稿:京都新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年03月01日 16:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます