路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

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【中山知子の取材備忘録・09.17】:小渕優子氏が涙をこらえる姿は9年前にも…本人だけでなくみんなが忘れていなかった「傷」

2023-10-02 00:10:30 | 【政治とカネ・政党交付金・政治資金・議員歳費・賄賂・後援会名による政治資金...

【中山知子の取材備忘録・09.17】:小渕優子氏が涙をこらえる姿は9年前にも…本人だけでなくみんなが忘れていなかった「傷」

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【中山知子の取材備忘録・09.17】:小渕優子氏が涙をこらえる姿は9年前にも…本人だけでなくみんなが忘れていなかった「傷」 

 かつて「涙は女性の最大の武器」と発言し、批判されたのは小泉純一郎首相だった。当時外相だった田中真紀子氏が、自身の判断をめぐって自民党幹部と会談後、報道陣の前で「一生懸命やっているんですけどね…」と言って顔をゆがめた際のことを念頭に置いた発言。「泣かれると男は太刀打ちできないでしょ」と続くのだが、女性議員が抗議して小泉氏が国会答弁で説明する事態にもなった。

就任会見に臨む自民党の小渕優子選対委員長(2023年9月13日)
就任会見に臨む自民党の小渕優子選対委員長(2023年9月13日)

 自民党の選対委員長に就任した小渕優子氏が9月13日に、党四役の就任記者会見に臨んだ際、9年前に表面化した自身の関連団体の不明朗政治資金支出について問われた際、答える中で声を詰まらせ、涙声になった。カメラのフラッシュの音がいっそう激しさを増す中、小渕氏は「あの時に起きたことは政治家として歩みを続ける中で、心の中に反省を持ちけして忘れることのない傷」「私の今後の歩みを見て頂いた上でご判断いただきたい」と、涙をこらえながら訴えた。

 就任記者会見は、言ってみれば「ハレの場」。そこで涙ながらに話さなくてはならなかったのは、9年前の「」への悔しさ、悲しさなのか…。そんなことを考えながら取材を続けた。

 小渕氏はこの時、泣いたり涙をこぼしたわけではない。ただ「小渕氏と涙」というのは、記憶に残る範囲でこの時だけではなかったように思う。

 第2次安倍政権で経産相に抜てきされた2014年秋、就任直後に週刊新潮の報道で今回の「政治とカネ」の問題が表面化し、辞任に追い込まれた。戦後最年少(34歳9カ月)での初入閣や「初の女性首相」への期待など、それまで日の当たる道を歩いてきた小渕氏にとって、ステップアップの機会とみられていただけに、就任からわずか1カ月あまりの2014年10月20日に行われた大臣の辞任会見には、立すいの余地もないほどのメディアが集まった。小渕氏はその会見でも涙をこらえ、言葉に詰まる場面があった。「こうなった以上、すべてが甘かった。政治家としては一から出直そうと思っている」と語った。辞任後は雲隠れ沈黙が続き説明責任を果たしていない」との批判にさらされた。

 次の説明のチャンスまで1年の時が流れた。小渕氏本人が地元の群馬県で記者会見したのは1年後の2015年10月20日。その前日に、小渕氏の依頼で設置された第三者委員会の記者会見も行われ、委員長を務めた元最高検検事の弁護士は、小渕氏の監督責任は認めつつ、小渕氏自身が直接不正に関与していないため「不正処理に関する法律上の責任を強く問うことにはためらいを感じざるを得ない」と指摘した。

 この第三者委の会見を受けて、小渕氏は東京ではなく地元の群馬県前橋市で会見したのだが、私は出席を認められず、閉め出された。さまざまな手を尽くし、なんとか発言内容を調べようとしたことを覚えている。ピンチの時ほど多くの人に伝わるようにした方がいいのではないかと思う時に限って、「内向き」な説明になってしまうケースは少なくない。この時、小渕氏は後に有罪判決を受けた元秘書らに会計処理を任せきりだったとして「早く報告したかったが、(第三者委の)報告書を待っていた」と釈明したが、最初の説明のタイミングが遅れたことを払拭(ふっしょく)するような機会には、ならなかったと思っている。

 小渕氏はこの会見に先立って行われた後援会の会合で、「もう1度群馬のために頑張れ」の声を受け、やはり涙ぐみながら「地元のためにこれからも頑張ります」と表明した。小渕恵三元首相の後継者で有力支援者には「姫」と呼ばれ、地盤も強く、スキャンダルを抱えても選挙は圧勝で乗り切ってきた。「選挙に勝てばみそぎは済んだ」という言葉はよく聞くが、期待された小渕氏が受けたダメージ、選挙結果とは別の観点から大きかったのではないかと感じる。

 身内への説明では理解してくれる人がほとんどでも、外向きの説明では必ずしもそうとは限らない。だからこそこれまで、積極的に自ら幅広く説明することが必要だったと思うし、そうではなかったからこそ「説明不足」の評価を引きずったまま9年が過ぎてしまったのではないか。

 自民党内では、小渕氏の「復活」には好意的な声も多いと聞く。「雌伏9年」と話す人もいた。ただ13日の記者会見では4役が出席し、約30分と時間が限られた。そんな中での小渕氏のやりとりで最も印象に残ったのが、「傷」をめぐる涙がらみの言葉だった。少し残念な思いもした。「涙で逃げ切り」「泣いてごまかし」などの声も聞いた。

 普段の小渕氏はさばさばしてあねご肌的な側面もあり、慕う議員も多いと聞いたことがある。岸田文雄首相は「選挙の顔の1人」への期待を口にしており、この先、再び表舞台に出て行くきっかけが、今回の選対委員長起用になるのかもしれない。それでも、自身が「けして忘れることのない傷」と言及した問題は、メディアも国民も同様だと思う。そんな現実にケリをつけるための小渕氏の発信、涙ではなく言葉を、見ていきたい。10月の衆参両院補選では、選対委員長としての手腕もいきなり問われることになる。【中山知子】(ニッカンスポーツ・コム/社会コラム「取材備忘録」)

中山知子の取材備忘録

 ■中山知子の取材備忘録

 ◆中山知子(なかやま・ともこ) 日本新党が結成され、自民党政権→非自民の細川連立政権へ最初の政権交代が起きたころから、永田町を中心に取材を始める。1人で各党や政治家を回り「ひとり政治部」とも。現在、日刊スポーツNEWSデジタル編集部デスク。福岡県出身。青学大卒。

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・コラム・「中山知子の取材備忘録」】  2023年09月17日  11:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。


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