【社説①】:知床観光の海難 捜索と原因究明全力で
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:知床観光の海難 捜索と原因究明全力で
大型連休入りを前に、近年例のない重大な観光船事故が起きた。
おととい、知床半島の西側を航行していた小型観光船から救助要請があった。
子供2人を含む乗客24人と乗員2人の計26人が乗っていた。船とはその後連絡が取れなくなった。
きのうの朝から、乗船していたとみられる人たちが相次いで見つかり、死亡が確認された。
まだ現地は寒く海水は冷たい。海上保安庁など関係機関は、行方が分からない人たちの捜索と迅速な救助に全力を挙げてほしい。
観光船は、オホーツク管内斜里町のウトロ漁港を出て知床岬沖まで北上し、そこで折り返して戻る予定だった。救助要請時はウトロと岬の間にあるカシュニの滝近くを航行中だったという。
亡くなった人たちは滝からかなり離れた知床岬近くで見つかった。潮に流された可能性がある。
潮流の状況を踏まえ、さらに広い範囲の捜索が必要だろう。
国土交通省運輸安全委員会の船舶事故調査官3人が現地で調査を始めた。船に一体何があったのか。原因の究明には船体の発見と調査が重要になる。
おとといは強風と波浪の注意報が出ていた。地元の漁業者たちは漁を早々に切り上げていた。
観光船の運航会社は、他社に先駆けて今季の運航を始めた。乗客は道内のほか、東京や九州など各地から来ていた。関係機関は、出航判断の是非についても慎重に調べてもらいたい。
世界自然遺産に登録されている知床の観光は例年大型連休から本格化する。観光船は雄大な景観の中でヒグマなどが観察できるとあって人気が高く、中でも小型船は岸に近づくのが売りだ。
ただ岩礁が多く潮の流れが激しいため、岩に乗り上げるなどの事故がたびたび起きている。
この観光船も昨年、浮遊物への衝突と座礁の事故を続けて起こしていた。
北海道運輸局は運航会社の安全管理体制などを調べる特別監査を始めた。併せて、運輸局自身の安全指導などの対応が十分だったかどうかの検証も不可欠だ。
ウトロの小型観光船の協議会は大型連休中の運航自粛を決めた。やむを得まい。道内観光への影響が懸念される。各地の観光船の安全体制の再点検が求められる。
この大型連休はコロナ対策の移動制限が解かれ、道内各地で多くの人出が見込まれる。各事業者は安全に万全を期さねばならない。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2022年04月25日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます