《社説①・01.29》:代表質問への首相答弁 国会重視の姿勢見えない
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・01.29》:代表質問への首相答弁 国会重視の姿勢見えない
国会審議を通じて各党と主張をぶつけ合い、認識を共有して政策課題を解決する。そうした姿勢は見られなかった。
石破茂首相が衆参両院で、施政方針演説に対する代表質問に臨んだ。しかし、国民生活に直結する重要課題で、明確な答弁を避ける場面が目立った。

とりわけ、国会を軽視していると受け取られかねないのは、選択的夫婦別姓制度を巡る答弁だ。
制度の導入へ指導力を発揮するよう求めた立憲民主党の野田佳彦代表に対し、自民党内の議論を急ぎ、早期に結論を得る考えを示すにとどまった。
一方、前日配信されたインターネット番組では、法律を改正して旧姓の通称使用を拡大する案が選択肢になると言及した。選択的夫婦別姓に対する党内保守派の反対を踏まえた折衷案である。
国会の外で具体策を示しながら、国民の代表が議論する場では口を閉ざすのは理解に苦しむ。これでは論戦の深まりようがない。
一部野党が求める「年収の壁」の大幅な引き上げや高校授業料無償化については、「政党間で協議を進める」と答弁するだけで、政権の考え方は示さなかった。
予算案への賛成を取り付けるための材料として、与党が日本維新の会、国民民主党と個別に協議しているためだ。数合わせを優先し、国会の議論をないがしろにする振る舞いは受け入れられない。
トランプ米大統領が温暖化対策の国際ルール「パリ協定」から離脱すると宣言したことなどへの論評は避けた。外交への影響が大きいにもかかわらず、認識や対処方針を示さないようでは心もとない。
主張を明確にしたのは企業・団体献金の扱いだ。政策をゆがめるリスクが指摘されているにもかかわらず、「禁止する理由はない」と断言した。
自民総裁としての発言だと言うが、持論を述べたい時だけ立場を使い分けるのは、ご都合主義だと言わざるを得ない。「平成の政治改革」では、当時の責任者が全面禁止を想定していたはずだ。
首相は国民の関心事に正面から答え、説明を尽くすことが欠かせない。今後行われる予算委員会を含め、国会との向き合い方が問われることになる。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年01月29日 02:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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