【大谷昭宏のフラッシュアップ・05.08】:子どもの命をあずかる人の重い大きな責任 通園バス置き去り女児死亡事件
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【大谷昭宏のフラッシュアップ・05.08】:子どもの命をあずかる人の重い大きな責任 通園バス置き去り女児死亡事件
先週、こども家庭庁への思いを書いて、5日の「こどもの日」を挟んで、また子どもにかかわる話。
少し前、河本千奈ちゃんのお父さんが、私が出演している静岡朝日テレビの「とびっきり!しずおか」の取材に心の内を語ってくれた。
「いま思えば大切な日々でした。入園の時や家族の誕生日。ケーキを買ってお祝いするのですが、本当にうれしそうで、楽しそうで」
牧之原市のこども園「川崎幼稚園」に通っていた3歳の千奈ちゃんは昨年9月、猛暑の中、園長(73)が運転、76歳の派遣社員の女性が乗っていた通園バスに置き去りにされ、亡くなった。全身が赤く腫れ上がり、水筒は空になっていた。
「お風呂から出て千奈の体を乾かし、千奈が『パパ大好き』と手を広げて、私も千奈を抱きしめて。たまにそんなことを思い出して」
お父さんの言葉に合わせて、さまざまな映像が流れる。イチゴをほお張る千奈ちゃん。生まれたばかりの妹に上手にミルクをあげる千奈ちゃん。
その千奈ちゃんが通った川崎幼稚園は、「園を閉じて」という両親の声は届かず、1カ月後に園長を息子が引き継ぐ形で再開された。
「バスに安全装置をつけることが義務化され、事態はよくなると思います。だけど意識の低い職員に、どんな装置を提供しても同じことが起きるのではないでしょうか。それに、千奈は安全装置義務化のために生まれてきたのではないのです」
当時の園長や派遣の女性は昨年末、業務上過失致死容疑で書類送検されている。だけど、車で人を死なせた事故と同じ刑罰でいいのか。子どもの命をあずかる人には、はるかに重い大きな責任があると思うのだ。
◆大谷昭宏(おおたに・あきひろ)
ジャーナリスト。TBS系「ひるおび!」東海テレビ「NEWS ONE」などに出演中。
■大谷昭宏のフラッシュアップ
元読売新聞記者で、87年に退社後、ジャーナリストとして活動する大谷昭宏氏は、鋭くも柔らかみ、温かみのある切り口、目線で取材を重ねている。日刊スポーツ紙面には、00年10月6日から「NIKKAN熱血サイト」メンバーとして初登場。02年11月6日~03年9月24日まで「大谷昭宏ニッポン社会学」としてコラムを執筆。現在、連載中の本コラムは03年10月7日にスタート。悲惨な事件から、体制への憤りも率直につづり、読者の心をとらえ続けている。
元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・連載・「大谷昭宏のフラッシュアップ」】 2023年05月08日 08:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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