【社説①】:尹大統領演説 日韓改善の流れを不可逆的に
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:尹大統領演説 日韓改善の流れを不可逆的に
日本重視の姿勢を改めて鮮明にしたことを歓迎したい。日韓が関係改善の流れを定着させ、脅威の度を増す北朝鮮に対する抑止力強化につなげることが大切だ。
韓国の尹錫悦大統領が、日本の植民地支配に対する「3・1独立運動」の記念式典で演説した。
尹氏は、日本について、「共同の利益を追求し、世界の平和と繁栄のために協力するパートナーとなった」と表明した。
来年で日韓国交正常化から60年の節目を迎えるのを機に、自由や人権などの価値を共有する日本との関係を「一段階飛躍させることを期待する」と述べ、日韓協力を一層深化させる考えを示した。
日本との歴史問題についても、「交流と協力を通じて信頼を積み重ね、歴史が残した難しい課題を共に解決していけば、より明るい未来が開ける」と強調した。
韓国で反日感情が刺激されがちな独立運動記念日に、大統領が日本と未来志向の関係を築く重要性を国民に訴えた意義は大きい。元徴用工(旧朝鮮半島出身労働者)問題への言及もなかった。
尹氏には、韓国が地域と世界の安定に役割を果たしていく上で、対日関係を進展させることが不可欠だとの信念があるのだろう。
北朝鮮は、核・ミサイル開発を加速させるとともに、韓国を「第1の敵対国」と位置づけるなど、挑発を強めている。
北朝鮮を抑止するためには、日米韓が結束を強固にすることが欠かせない。3か国による合同演習の拡充や北朝鮮の動向に関する情報共有を進め、万が一の事態に備えることが肝要だ。
尹政権は、日米との関係改善や、北朝鮮の友好国・キューバとの国交樹立など、外交では成果を上げている。ただ、その一方で、足元の内政は不安定な状況にある。
尹氏の支持率は、不支持が支持を上回っている。国民生活に直結する物価上昇や深刻な少子化に有効な手を打てていないことが影響していよう。
4月の総選挙を巡っても、与党「国民の力」と、国会で最多の議席を持つ左派系最大野党「共に民主党」が支持率で 拮抗 している。与党が敗北すれば、尹政権のレームダック化は避けられまい。
韓国ではこれまで、内政の行き詰まりから対日強硬路線をとる政権が多かった。政権交代で日韓関係改善が後退することもあった。尹氏は、日本との良好な関係が韓国の利益になると、国民に粘り強く訴えていってもらいたい。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年03月04日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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