【主張】:京アニ事件公判 真相究明に全力を尽くせ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【主張】:京アニ事件公判 真相究明に全力を尽くせ
36人が死亡し、32人が重軽傷を負った京都アニメーション(京アニ)放火殺人事件で、殺人罪などで起訴された青葉真司被告の公判前整理手続きが京都地裁で始まる。
平成以降で最多の犠牲者を生んだ事件は、発生から、はや約3年10カ月がたとうとしている。最大の争点は刑事責任能力になるとみられるが、迅速かつ丁寧な審理で、真相究明に全力を尽くしてほしい。
令和元年7月、京都市伏見区の京アニ第1スタジオに侵入、ガソリンをまいて放火して全焼させた青葉被告は、自らも重度のやけどを負った。
最先端の治療を受けて一命をとりとめて逮捕されたが、精神疾患での通院歴もあり、京都地検は半年間の鑑定留置を行ったうえで刑事責任能力を問えると判断、殺人など5つの罪で起訴した。弁護側の請求に基づく2度目の精神鑑定も行われ、昨年3月に結果も出たという。公判は今年9月にも始まり、年内に審理を終えて年明けには判決が言い渡される、との見方が出ている。
逮捕時、青葉被告は「ガソリンを使えば多くの人を殺害できると思った」と容疑を認める一方、「京アニに小説を盗まれた」と不可解な動機を述べている。極めて身勝手な言い分の結果は、あまりに非道で残酷である。
豊かな才能と夢を持っていた36人の命を瞬時に奪った理不尽さは言葉に尽くせるものではなく、奪われた命は二度と戻らない。それでも、事件の真相解明と真摯(しんし)な反省は必要不可欠だ。法治国家で司法が果たすべき責務である。
京アニ事件後、大阪のクリニックで起きた放火殺人事件では26人の命が奪われた。昨年7月には奈良市内で遊説中の安倍晋三元首相が手製銃で銃撃されて死亡し、先月は岸田文雄首相が和歌山市の選挙演説会場で爆発物を投げつけられた。
いずれの犯人も、組織に属さずに単独でテロ行為に及ぶ「ローンオフェンダー」だった。失うものがなく、躊躇(ちゅうちょ)せず凶悪犯罪に及ぶケースも目立っている。
私たちの社会はこれ以上、このような犯罪者を生み出してはならない。再発防止策は必要だが、十分条件にはなり得ない。
元稿:産経新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【主張】 2023年05月08日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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