【HUNTER・02.28】:鳥獣法改正「大きな前進」― 銃所持裁判の当事者が改正案を高評価
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【HUNTER・02.28】:鳥獣法改正「大きな前進」― 銃所持裁判の当事者が改正案を高評価
「これは大きな一歩。かなりの前進と言ってよいと思います」ーー北海道猟友会・砂川支部長の池上治男さん(75)は、2月21日に伝わったニュースを好意的に受け止める。同日午前に政府の閣議決定が報じられた、鳥獣保護法の改正案(概要→ コチラ)。
改正が実現すれば市街地での猟銃の使用が認められ、ヒグマなど有害鳥獣の駆除にあたるハンターが発砲判断に責任を負わずに済むようになる。自治体の要請による駆除行為で銃所持許可を取り消され、その処分の撤回を求めて国と裁判を争っている池上さんにとって、今回の改正案国会提出は吉報と言えた。
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環境省が公式サイトで公開している資料によると、改正案ではヒグマやイノシシなどを「危険鳥獣」に位置づけ、同鳥獣が人の生活圏に侵入した際に市町村の判断で猟友会などに発砲を委託できるようになる。現行法では市街地での発砲や夜間の銃猟は違法となり、駆除時には警察官職務執行法で対応しなくてはならないところ、改正案ではより現実的な対応が可能となる形だ。発砲で建物に被害が生じた場合も自治体が被害を補償し、駆除を引き受けたハンターの責任は問われないことになる。
まさに自治体の要請でヒグマを駆除し、長く裁判を続けることになった池上さんとしては「かなりの前進」と評価できる動きだ。
「政府は、これまで踏み込めなかった所へ踏み込んだ。私のようなケースが今後も起きるようなことがあれば、ハンターも困るし市町村も警察も困る。今後はもう一歩進めて、危険獣に対しては自治体もハンターも責任を負うことがなくなるようにすべきでは」
池上さんはかねてから都道府県、市町村、警察、及び猟友会の「四者協議」の必要性を訴えてきた。今回は改めてその意義を再確認しつつ、法改正を受けて警察も変わっていくべきと訴える。
「いくら法が変わっても、たとえば札幌の大通公園にヒグマが出たとしたら、ライフルでの対応は危険過ぎて現実的でない。もっと射程が短かく接近戦に向いたショットガンなどを使う必要があり、そうなるとそういう銃の扱いに長けた駆除従事者を育成する必要も生じてくる。もっと言えば、これからは基本的に警察が自ら資格を取って猟銃を持つようになるべきで、実はそれが一番いい方法。法改正は大きな前進だが、考えようによってはこれで政治が警察へボールを投げたとも言えるのではないか」
改正法案の国会提出を伝える浅尾慶一郎・環境大臣の21日の記者会見は現在、環境省の公式 YouTube チャンネルで公開中( ⇒コチラ)。質疑応答の冒頭部分では、池上さんの裁判を引き合いに出した記者の質問に浅尾大臣が「ハンター個人の責任は生じない」と明言しているやり取りを確認できる。
おりしも池上さんの地元・北海道の空知管内では19日午後に「野生鳥獣等対策連絡協議会」が招集され、自治体や警察、猟友会などがヒグマ対策などを話し合ったばかり。会議では箱罠猟の取り組みや春季管理捕獲についての報告が関心を集めたが、猟友会支部長として参加した池上さんが「もっと本質的なこと(直近のヒグマの動きや現場の協力体制など)を話し合おう」と苦言を呈する一幕があった。
本サイト既報の通り、銃所持許可をめぐる裁判は一審・札幌地方裁判所で原告の池上さんの主張が全面的に認められて許可取り消し決定の撤回が命じられたが、これを不服とした被告の北海道公安委員会が控訴した結果、二審の札幌高裁が地裁判決を覆して池上さん逆転敗訴の判決を言い渡した(既報)。池上さんはただちに上告、2月3日には最高裁から「記録到達」を確認する通知が届いたが、上告が受理されるかどうかは未知数だ。21日の鳥獣法改正案を受け、当事者の池上さんは「今回の閣議決定は重い。裁判所の判断もおかしな結果にならないことを願う」と話している。
(小笠原淳)
【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】 ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。 |
元稿:HUNTER 主要ニュース 社会 【話題・法律・政府の閣議決定が報じられた、鳥獣保護法の改正案(概要→ コチラ)。改正が実現すれば市街地での猟銃の使用が認められる】 2025年02月28日 07:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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