路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

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【社説①】:年のはじめに考える 雨上がりの空に「虹」を

2024-01-10 08:06:50 | 【LGBTQ+=ジェンダー・アイデンティティ、レズ、ゲイ、バイセクシャル、

【社説①】:年のはじめに考える 雨上がりの空に「虹」を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:年のはじめに考える 雨上がりの空に「虹」を

 昨年の暮れ、東京都台東区に住むタカユキさん(51)とミノルさん(52)=写真=を訪ねました。付き合って30年になるゲイ(男性同性愛者)のカップルです。

 2人は2020年、当時住んでいた文京区で同性パートナーシップ宣誓制度を利用しました。区が人生の伴侶と認める仕組みです。
 
 十数年前、タカユキさんが肺炎で危篤に陥ったとき、ミノルさんをパートナーだと病院に告げましたが、病状説明や緊急連絡先は両親にするよう強く求められました。「もう嫌な思いをしたくない。2人の間柄を証明したい」と制度を利用したのです。
 ところが、2人が昨年12月に引っ越した台東区に同様の制度はありませんでした。その上、パートナーと証明する文京区発行のカードは返還する決まりでした。
 
 「2人の関係まで否定されたみたい」と憤るタカユキさん。ミノルさんは「最初から期待していなかった」と諦め気味です。

 ◆同性婚の法制化に遅れ

 15年に渋谷、世田谷区で始まった宣誓制度。認定NPO法人「虹色ダイバーシティ」などによると328自治体(昨年6月時点)に拡大し、利用カップルは5171組(同5月時点)に上ります。
 
 しかし、民法が定めている男女の結婚のような法的保護はありません。それは相続や社会保障、税など幅広い分野に及びます。
 
 2人は「遺産を相手に相続してほしいが、法的な保障はない。同性婚が可能なら、すぐに結婚したい」と口をそろえます。
 
 そんな性的少数者(LGBTなど)の声に対し、一定の理解を示したのが「同性婚訴訟」判決です。
 
 同性婚を認めていない民法などの規定が憲法違反かどうかが争われ、判決の出た5地裁のうち2地裁が「違憲」、2地裁が「違憲状態」と指摘したのです。
 
 憲法14条1項「法の下の平等」の違反、24条2項「個人の尊厳」の違反とばらつきはありますが、判決の論旨は似ています。
 
 同性カップルが重大な不利益を被っていると認めた上で、同性婚の賛成派が反対派を上回る近年の調査結果などを踏まえ、法的対応を促している点です。
 
 国による同性パートナーシップ制度は1989年にデンマークで始まりました。さらに男女の結婚と同等にする努力が続き、同性婚は2001年のオランダを皮切りに欧米など30超の国・地域で実現しています。アジアでは台湾が導入し、タイでも国会で法制化への審議が進んでいます。
 
 こうした世界の動きから、日本は取り残されています。
 
 同性婚訴訟は3月に初の高裁判決が出ますが、最高裁までもつれることも予想されます。LGBT当事者の不利益がこれ以上見過ごされてはなりません。国は同性婚の法制化へ踏み出すべきです。

 ◆LGBTの尊厳を否定

 問題は法的、経済的な不平等だけではありません。
 
 「レズビアン(女性同性愛者)だから結婚できない。どう生きて良いか分からなかった」。中野区の直子さん(42)=仮名=は将来への不安から死を思う一方、深酒などを重ねていました。
 
 安らぎを得たのは15年前、同性パートナーの雪乃さん(48)=同=との出会い。直子さんは「いつか寿命が来たら、相手の顔を見ながら死にたい」と言います。
 
 信頼できる伴侶と、社会に認められて暮らす。そんな当たり前のことを否定されることがLGBT当事者には深刻なのです。子どものころから自己を肯定できなかったり、精神的苦痛を抱えたりする原因がそこにあります。
 
 その人の人生全体への脅威であり、人間の尊厳を否定する問題です。人権がないがしろにされていると言わざるを得ません。
 
 「もし、わが子がLGBTだとしたら…」。こう想像することができれば、差別の重大さに気付けるかもしれません。「同性の恋人と結婚する道もある。人生を堂々と歩めばいい」と励ましてあげられる社会なら、その子どもはどれだけ勇気づけられるでしょう。
 
 LGBTの象徴である虹色の旗レインボー・フラッグを見て思い出すのは、英語の「No rain,no rainbow」という格言です。雨が降らなければ虹は出ない、つまり「雨が降るからこそ、その後に虹が出る」という意味になります。
 
 日本ではいまだに冷たい雨が降り続いていると、LGBT当事者は感じていることでしょう。一刻も早く降りやませ、空に美しい虹をかけたいのです。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年01月09日  08:06:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。


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