【ここがおかしい 小林節が斬る!】:自民党は性的少数者理解増進法に抵抗し、偏見を墨守しているとしか思えない
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【ここがおかしい 小林節が斬る!】:自民党は性的少数者理解増進法に抵抗し、偏見を墨守しているとしか思えない
性的少数者(LGBT)に関する理解増進法が今月16日にようやく成立した。
同法は、全ての国民が「性的指向」にかかわらず、個人として(つまり「そのような自分であること」を)尊重し合いながら、共生できる社会を実現するために、国、自治体、事業主、学校の役割を説いた「理念」法である。
科学の進歩の結果、LGBTが、個人の趣味(or悪趣味)の問題ではなくて、先天的に与えられてしまったDNAの問題であることが明らかになった結果、LGBTに対する理解が急速に進んだ。その効果として、LGBTに対する差別(正当な理由のない不利益)が人権問題(個人の尊厳の侵害)として意識されるようになった。
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小林 節 慶応大名誉教授(C)日刊ゲンダイ
確かに、現行の法律制度では同性婚が認められていない結果、LGBTの当事者は、不動産取引、扶養、健康保険、税金、相続等で現に不当な不利益(差別)を被っている。だから、最近、同性婚を認める法律がない状態が違憲であるという地裁判決が相次いでいる。これが文明諸国における趨勢である。
ところが、同法の成立直前になって、自民党内からの強い抵抗が顕在化した。
ある法相経験者は、性的少数派に対する偏見は否定しながらも、女性トイレにトランスジェンダーを装った男性が入り込むリスクを強調した。しかし、その危険は今でもあるわけで、その犯罪対策と現に広く存在するLGBT差別からの解放は別のものである。
また、別の有力議員は、「日本は思いやりにあふれた国柄で同性愛が厳しく弾圧された歴史はない」旨を主張した。しかし、現実に、上述のような法律上の不利益があり、それは当事者にとっては「弾圧」以外の何ものでもない。
さらに、ある議長経験者は、性的少数者に対する「差別」(不当な不利益を与える)という意識はないが、「区別」(別モノとして認めること)はしてほしい旨を述べた。しかし、同性婚を認めていない法律の現状は、「区別」を超えた「差別」そのものではないか。
このように、自民党が何にこだわっているのかが理解不能である。私には単に偏見を墨守しているようにしか見えないが。
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1949年生まれ。都立新宿高を経て慶大法学部卒。法学博士、弁護士。米ハーバード大法科大学院の客員研究員などを経て慶大教授。現在は名誉教授。「朝まで生テレビ!」などに出演。憲法、英米法の論客として知られる。14年の安保関連法制の国会審議の際、衆院憲法調査査会で「集団的自衛権の行使は違憲」と発言し、その後の国民的な反対運動の象徴的存在となる。「白熱講義! 日本国憲法改正」など著書多数。新著は竹田恒泰氏との共著「憲法の真髄」(ベスト新著) 5月27日新刊発売「『人権』がわからない政治家たち」(日刊現代・講談社 1430円)
元稿:日刊ゲンダイ DIGITA 主要ニュース 政治・社会 【政治ニュース・連載・「ここがおかしい 小林節が斬る!」】 2023年06月21日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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