【社説②・02.27】:下請法の改正 正当な価格転嫁広げよ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・02.27】:下請法の改正 正当な価格転嫁広げよ
中小企業に負担を押しつけるような不公正な取引を改められるか、実効性が問われよう。
政府は、下請法の約20年ぶりとなる抜本改正に向け、今国会に法案を提出する。
見直しに向けた公正取引委員会と中小企業庁の有識者会議の報告書を踏まえた。
発注側の大企業が受注側の中小企業と協議せず、価格決定することを禁止する規定を新設する。大企業側が一方的に価格を据え置いたり、コストに合わない価格を押しつけたりする「買いたたき」を防ぐ狙いという。
昨年の中企庁の調査では、コスト上昇分を価格に全額反映できたのは4分の1に過ぎず、2割は全く転嫁できていない。
京都府の主要な業界組合42団体の昨年調査でも、コスト増を受けた価格引き上げは半数にとどまっている。
下請けの段階が1次から2、3次となるにつれ、企業規模が小さく、交渉力が弱くなると指摘されている。
形だけの価格交渉にならないよう効果的な措置や確実な監視、指導が不可欠だ。十分と言えない公取委の人員体制や通報、相談対応の充実も求められる。
大企業が意図的に資本金を減額したり、中小企業に増資させたりする下請法の適用逃れも問題視されてきた。
法改正では、資本金額のほか、従業員数の基準を追加する。
製造業や建設業、運輸業などは、従業員300人超の大企業が、それ以下の中小企業に発注する場合を対象とする方向だ。
公取委は昨年来、自動車、電機関連に、発注の見込みがない金型を取引先に無償で長期間保管させた下請法違反として、相次いで再発防止を勧告した。家電量販店も値引きの原資にリベートを受け取り、勧告を受けている。
受注側に負担を強いる取引慣行は根深い。2023年度は発注側への指導や勧告が8千件以上に上っている。
業界ごとの悪弊にもメスを入れる必要があろう。
法改正に合わせ、差別的なイメージととれる「下請け」の用語も変更する方針という。対等な関係の内実が伴わなければ意味がない。
価格転嫁をサプライチェーン(供給網)全体に浸透させなければ、経済の目詰まりは改善できず、好循環は生まれない。
働く人の7割を占める中小企業の賃上げ波及に向け、重要な鍵となろう。
元稿:京都新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年02月27日 16:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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