《社説①》:ウクライナ侵攻 占領地のロシア化 既成事実にしてはならぬ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①》:ウクライナ侵攻 占領地のロシア化 既成事実にしてはならぬ
ロシア軍が侵攻したウクライナの東部や南部で、国籍の付与など事実上の「ロシア化」が進められている。主権国家の領土を一方的に自国に編入しようとするやり方は、明白な国際法違反だ。
東部のドネツク、ルガンスク両州に続き、南部へルソン州や南東部ザポロジエ州でロシアのパスポートが発行された。
プーチン露大統領が軍事占領した地域の住民を対象に、ロシア国籍の取得を容易にする大統領令に署名したことに伴うものだ。
ロシア系企業が通信や銀行の業務に乗り出し、通貨ルーブルの流通が図られている。
また、これらの州では親露派による暫定州政府が、ロシアへの編入の是非を問う住民投票の年内実施を計画している。9月にスタートする新学期から、教育内容を露国内と同じにすることも検討されているという。
ルガンスク州の要衝セベロドネツクでは先日、中心部につながる3本の橋がすべて破壊された。住民を物理的に孤立させ、占領政策に従うよう強いるもので、卑劣というほかない。
プーチン氏は侵攻直後、「ウクライナ領の占領は計画していない」と明言していた。しかし、現状は占領そのものだ。
ウクライナ政府が露大統領令を「無効」と主張し、ロシアの行動を国際法違反と非難するのは当然である。
国連憲章は主権国家の領土保全を約束している。また、ソ連・ロシアはこれまで、同じ趣旨の条約に数多く署名した。
ウクライナは2014年、ロシアとミンスク合意を結び、東部2州での一定の自治を認めた。しかし、ロシア化の動きはその合意をも踏みにじっている。
20世紀の大戦で人類は多大な犠牲を払った。その経験から国際社会は、国家間の対立を国際法に従い解決すると決めた。
そうした戦後の秩序作りでソ連・ロシアは中心的な役割を果たしてきたはずだ。プーチン氏はこの国際秩序を自ら破壊した。
武力による地域支配の既成事実化を許せば、世界は弱肉強食の時代に逆戻りする。国際社会は一致してロシアの蛮行を止めなければならない。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2022年06月16日 02:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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