【社説①】:空港民営化多難 国内客重視に転換必要
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:空港民営化多難 国内客重視に転換必要
新千歳など道内7空港民営化で北海道エアポート(HAP)が上下一体運営して1年が過ぎた。
コロナ禍とウクライナ情勢悪化で旅客回復の道筋は不透明だ。
このため本年度は旅客目標を2通り示す異例の計画とした。どちらも巨額の営業赤字を見込む。
不動産や商社など大手中心に道内外17社が参画したHAPだが、先月末で資本金を371億円から1億円に減資した。中小企業化し税負担を軽減させる狙いという。
国や金融機関の支援で経営基盤強化を図る現状だ。逆風が続けば経営難で「第二のJR北海道」になりかねない不安もつきまとう。
まずは訪日外国人客重視だった当初構想を見直し、国内客に選ばれる地道な空港づくりを目指すべきだ。7空港が地域と共に歩む視点も必要となる。
昨年度の7空港旅客数は約1200万人で、計画の1665万人を大幅に下回る見込みだ。
本年度目標は、国内線需要がコロナ前の85%まで回復した場合は2255万人、半分にとどまった場合は1305万人とした。
ただし国際線は楽観シナリオでも新千歳45万人、他はゼロだ。
7月に予定された新千歳とフィンランドを結ぶ定期便再開は、ウクライナ侵攻後のロシア領空閉鎖で中止となった。中国、韓国路線も含め国際線の展望は見えない。
HAPの基本構想では、民営化最終年度の2049年度に旅客数を1・6倍の4584万人にする目標を掲げた。うち国際線客は3・4倍の1307万人だった。
国は期間の2年延長を認めたが、それでも目標達成は厳しい。当面は5年間の中期計画を実態に即して修正するべきではないか。
計画変更には国や道などの調整が必要だ。協議を進めてほしい。
2月の暴風雪では新千歳に4千人が足止めされた。JRの長時間運休が原因だが、空港側にも陸上交通との連携強化を求めたい。
HAPは各空港をバスなど2次交通の乗り継ぎ拠点として集積する計画だ。街や観光地を結ぶ「空の駅」化すれば国内客回帰だけでなく住民の利便性も高まる。
今回の混乱から教訓を学び、緊急時連携の具体策を示すべきだ。
7空港民営化はドル箱路線の羽田―新千歳線がもたらす収益効果を各空港に再配分する狙いがあった。出資企業や銀行団も多く、国土交通省出身者が社長に就いた。
事業を再構築するためにも、組織をスリム化し意思決定を迅速にする体制も求められる。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2022年04月06日 05:05:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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