【社説・12.15】:尹大統領の弾劾可決 韓国の民主主義示した
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.15】:尹大統領の弾劾可決 韓国の民主主義示した
民主政治を揺るがす強権を発動した大統領が、国民の代表である立法府により、ついに職務を停止された。
韓国国会は14日、2度目の提出となった尹錫悦(ユンソンニョル)大統領の弾劾訴追案を可決した。国会などに軍を突入させた「非常戒厳」を憲法違反と断じ、与党からの賛同者も出て尹氏は弾劾された。
一度は廃案となった弾劾訴追案が再採決で可決に至ったのは、民主主義を守るために声を上げた韓国国民の力によるものに他ならない。
国会前で連日デモが開かれ、弾劾に賛成する世論は75%に上った。自らの政権維持のために職権を乱用した大統領の行為を許さず、民主的な手続きによって弾劾を成立させる原動力となった。韓国の民主主義の力を示した。
弾劾訴追の可決で、韓国は事実上の大統領不在の状態となる。今後、憲法裁判所が罷免するかどうかを180日以内に判断する。尹氏は弾劾裁判で争う構えを見せ、混迷は続く。秩序回復は容易ではないが、尹氏の職務停止を一歩として一日も早い混乱の収束へ向かうことが必要だ。
非常戒厳の宣言と解除以降、尹政権は機能停止に陥っていた。尹氏と共謀して内乱で重要任務を担った疑いで金龍顕(キムヨンヒョン)前国防相が逮捕され、現職大統領にも捜査の手が迫る事態となっている。
尹氏は12日に発表した談話で、戒厳令は「司法審査の対象にならない統治行為だ」として、内乱罪には当たらないと主張した。尹氏が辞任を拒んでいる以上、韓国の統治機能を立て直すには弾劾しかなかったといえる。
弾劾訴追の議決書は「尹氏は大統領として正常な国政運営が不可能で、内乱を首謀した捜査対象者だ」と結論付け、再び非常戒厳を宣言する可能性があることや、国民の統合、政局の安定のために弾劾罷免が必要とした。
野党だけで弾劾に必要な3分の2の賛成に届かなかったが、与党議員の一部に造反が出た。尹氏が早期退陣の求めを無視し、戒厳令を正当化する談話を発表したことで、これ以上擁護できないという認識が与党内に広がった。
政権交代を恐れる与党が7日の採決をボイコットし、最初の弾劾訴追案を不成立に追い込んだことに世論が強く反発したことも大きかった。再び採決を棄権することは国民の理解を得られないと判断したことは間違いない。
軍事政権時から続く非常戒厳を宣言できる大統領権限は、1人の権力者に強い権限を持たせる危うさを露呈させた。今回の戒厳令では国会だけでなく選挙管理委員会にも軍隊を派遣した。与党が大敗した4月の総選挙で不正があったという、根拠のない“陰謀論”に尹氏が傾倒している可能性が指摘されている。
韓国の憲法秩序を取り戻すために、権力の暴走を防ぐ民主的な統治について改めて向き合う必要がある。
元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月15日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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