【社説①】:軍民両用技術 産官学の協力体制を整えたい
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:軍民両用技術 産官学の協力体制を整えたい
欧米や中国は、先端技術を軍事と民生の両面で活用し、国防力を強化している。日本も産官学で連携して国際競争力を高めると同時に、防衛力を向上させていく必要がある。
政府は、各省庁が所管する国立研究開発法人の研究成果を、安全保障政策に反映させる方針を決めた。特に重要な研究として「情報セキュリティー」や「無人化・自律化」など9分野を挙げた。
国立研究開発法人は現在、宇宙航空研究開発機構(JAXA)など27の組織があり、海洋、情報通信など様々な研究を進めている。そこで得られた知見を防衛装備品の開発に役立て、防衛力を効率的に強化する狙いがある。
日本の科学技術関係予算は年4・8兆円に上るが、防衛省分は全体の5%弱にすぎず、十分に確保しているとは言えない。
先端技術は軍事、民生双方に活用できる。こうした軍民両用(デュアルユース)の技術開発を進めていく意義は大きい。
省庁間の協力とは別に、政府は優れた技術を持つ企業や、大学の研究者らとの連携も強化する方針だ。防衛装備庁に来年度、外部の研究者を支援し、装備品の開発につなげる研究機関を創設する。
革新的な技術を獲得するため、失敗も許容するという。従来の政府にはない発想と言えよう。
ただ防衛装備庁には既に、陸海空3自衛隊の各研究所と、サイバー対策などを担う次世代装備研究所の計四つの研究機関がある。
このほか他省庁にも、先端技術を扱う研究機関は多い。防衛装備庁に組織を新設するなら、省庁横断で組織再編を検討すべきだ。
デュアルユースを推進するには、意欲のある大学などの研究者に参加してもらうことが不可欠だ。だが、現在はそうした環境が整っているとは言い難い。
科学者の代表機関・日本学術会議は、科学者が戦争に加担したという認識から、軍事目的の研究を長い間、拒否してきた。
昨年ようやく、デュアルユース技術に関する見解をまとめ、研究の容認に含みを持たせたが、先月発表した文書では、そうした研究に関わった場合は「研究者の不利益に結びつくリスクもある」として消極的な姿勢を示した。
「研究者の不利益」とは何を指すのか。装備品の研究開発に参加した人が批判される、というのであれば、それは学術界内の問題だ。研究者の裁量を認め、 萎 縮 せずに研究に携われるようにするのが学術会議の役割ではないのか。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2023年10月01日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます