【天風録・12.17】:貸金庫の信用
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【天風録・12.17】:貸金庫の信用
端末にカードを差して暗証番号を押すと、頑丈なドアが開いた。無数の金属ケースの中から自分の番号を見つけ、鍵を回す。久しぶりに地場銀行の貸金庫を訪れた。三菱UFJ銀行で、行員が貸金庫内の金品を盗む事件が起きたからだ
▲月数百円で使える簡易タイプを10年余り前から借りている。土地の権利証や生命保険証書、実印は確かにあった。パスポートだけが見つからない。胸騒ぎを覚えつつ捜すと「パスポート取り出し」と妻のメモ。更新のため持ち帰ったのを思い出した
▲結局、あるべき物は全てあった。だが、ふと思った。何か盗まれていても、中身を知るのは私と妻だけ。2人の記憶違いで片付けられるのではないか。被害を証明するのは難しい
▲気付かれにくいとみたのか、三菱UFJの行員は合鍵を悪用し、4年半も東京の支店で盗みを繰り返していた。同行がきのう開いた記者会見は、時価十数億円とみられていた被害額がさらに膨らみそうな雲行きだった
▲盗難や火災などのリスクを考えると、銀行が最も安全と思う人は多いだろう。それなのに日本を代表するメガバンクでこんな事態が起きた。金額で表せないほどの信用を失ったのは間違いない。
元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【天風録】 2024年12月17日 07:00:00 これは参考資料です。転載等は、各自で判断下さい。
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