《倉重篤郎のニュース最前線・01.25》:闘う経済学者・金子勝の2025年日本経済大予測 円安インフレのドツボからどう抜け出るか?
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《倉重篤郎のニュース最前線・01.25》:闘う経済学者・金子勝の2025年日本経済大予測 円安インフレのドツボからどう抜け出るか?
◆アベノミクス失敗の徹底検証を/政権忖度のメディアも罪深い
物価高に呻吟する国民。産業全体の埋没。――日本経済の危機は、アベノミクスという失政の後遺症でもあるのではないか? 金子勝慶應義塾大名誉教授が、2025年の経済を展望、公正な分配、国民的な産業育成、食糧とエネルギーの自給に向けて激論する。
◆フェイクファシズムに立ち向かえ/財政ポピュリズムに抗し真っ当な税制改革論議を
新年冒頭、ある疑問を呈したい。なぜ日本経済はかくも埋没し、先行き不透明なのか。埋没ぶりはGDP一つとっても明らかだ。世界の中での日本のシェアは、1994年に17・8%だったのが、2024年は3・7%(予測)に縮んだ。国民1人当たりGDPもアジアで7位、世界では39位に転落する見通しだ。産業競争力にも陰りが出ている。不透明感は政策の方向性だ。国民は物価上昇に苦しんでいるのに、金利を上げる、というインフレ対策が取れない。賃上げコールはあるものの、実質賃金は下げ止まり、浮上の目途が立たない。
私見では、それはこの十余年続けてきたアベノミクス(=異次元金融緩和政策)に対するきちんとした総括と反省、そして決別ができていないからである。
昨年12月には日銀が「多角的レビュー(検証)」を発表、2%のインフレ目標を掲げた異次元緩和政策が、想定していたほどの効果は発揮せず、金融市場の機能低下や金融機関の収益の悪化などの副作用をもたらした、と指摘しつつ、経済や物価を一定程度押し上げ、デフレではない状態となることに貢献したとし、全体として「プラスの影響をもたらした」と総括した。
果たしてこれが妥当な自己診断だったのか。確かに、円安、株高効果で上場企業の懐は潤い、一定のプラスはあったように見えたが、それをはるかに上回る深刻な副作用と後遺症の中に日本経済を追い込んだ可能性があり、負の遺産をどう処理するかを、中央銀行として苦心惨憺(さんたん)している、というのが実相ではないか。
綺麗(きれい)ごとのレビューに比べ、日銀理事経験者による『異次元緩和の罪と罰』(山本謙三著 講談社現代新書 24年9月)が説得的だ。この政策実施期間を「前代未聞の経済実験の11年」と位置付け、…
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元稿:毎日新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム サンデー毎日【倉重篤郎のニュース最前線】 2025年01月25日 18:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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