《社説②・01.25》:日銀が追加利上げ 暮らしへの影響目配りを
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・01.25》:日銀が追加利上げ 暮らしへの影響目配りを
金融政策の正常化が、また一歩進んだ。日本経済を活性化する上で避けて通れない道だ。ただ、暮らしに与える影響を注視しなければならない。
日銀が24日の金融政策決定会合で、政策金利を現行の年0・25%程度から同0・5%程度に引き上げることを決めた。昨年7月に続く利上げ決定で、政策金利は2008年10月以来の水準となる。
消費者物価上昇率は、24年まで3年連続で物価目標の2%を上回っている。堅調な企業業績を背景に今春闘でも高い賃上げ率が予想されており、日銀は「賃金と物価の好循環」が続くと見込んだ。トランプ米政権発足に伴う市場の混乱も起きなかったことから、経済の実勢に比べて低すぎる金利を調整する好機と判断した。
日銀はこの日、25年度の物価上昇率見通しを昨年10月時点の1・9%から2・4%に上方修正した。植田和男総裁は記者会見で、物価目標の継続的な達成に自信を示した。「経済・物価見通しが実現していけば、それに応じて金利を引き上げていく」と述べ、さらなる金融正常化に意欲を見せた。
ただ、足元の物価上昇は円安による輸入品高騰を反映した面が強い。賃上げが物価高に追いついておらず、個人消費は低迷したままだ。利上げに伴って、住宅ローンの返済負担が増す家計や、借り入れコストが高まる中小企業の動向を注意深く見ていく必要がある。
日本はバブル崩壊後、デフレに陥り、1995年9月以降、政策金利が0・5%を超えたことがない。国民が「金利のある世界」に適応できないうちに利上げを急げば、景気を腰折れさせる。
トランプ政権の高関税政策が世界経済や市場を動揺させるリスクも消えたわけではない。関税が引き上げられれば、日本企業にも打撃が及ぶ。
政府の財政運営への影響も懸念材料だ。国債の金利上昇に備え、石破茂政権は借金頼みの状況から脱却を急ぐべきだ。
次の利上げが行われると、政策金利は0・75%となる可能性が高く、この30年間経験したことがない領域に入る。日銀はこれまで以上に国内外の経済情勢を丹念に点検し、適切なタイミングを探る必要がある。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年01月25日 02:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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