路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

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【中山知子の取材備忘録・08.27】:岸田首相あるある「スピード感のなさ」処理水放出めぐる中国側対応に「外交の岸田」をいつ発揮?

2023-10-02 00:10:00 | 【東京電力福島第一原発事故・放射能汚染・処理水の海洋放出問題と環境汚染

【中山知子の取材備忘録・08.27】:岸田首相あるある「スピード感のなさ」処理水放出めぐる中国側対応に「外交の岸田」をいつ発揮?

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【中山知子の取材備忘録・08.27】:岸田首相あるある「スピード感のなさ」処理水放出めぐる中国側対応に「外交の岸田」をいつ発揮? 

 「先送りできない困難な課題に、1つ1つ答えを出していくことに尽きる」。岸田文雄首相が国会答弁や記者会見で、何度も繰り返している言葉だ。この言葉は、だから「衆院解散しない」など、政局的な話題を否定するため使われることも多かったが、答えを出したところで政局どころではなくなってしまったのが、今回、政府が踏み切った東京電力福島第1原発の処理水海洋放出ではないだろうか。中国側が、日本産水産物の輸入全面停止の措置に踏み込んだことで、さまざまなところで大きな影響が出始めている。

岸田文雄首相(2023年8月2日撮影)
岸田文雄首相(2023年8月2日撮影)

 政府は処理水については、国際原子力機関(IAEA)による安全性の科学的根拠が示されていることを強調している。ただ、岸田首相が中国側の「いいがかり」(政府関係者)のような対応に毅然(きぜん)と反論した姿は、見えない。首相は中国側の方針が明らかになった8月24日、中国側に、措置の「即時撤廃」を求める申し入れを行ったとし「海洋放出の影響について科学的根拠に基づき、専門家同士がしっかり議論を行っていくよう中国政府に強く働き掛けていきたい」と述べた。IAEAが示した科学的根拠に触れながら、風評被害対策にも動く考えを示した。

 ただ、この時の言葉は記者会見ではなくぶら下がり取材の対応で、時間も10分弱。コメントを述べたという感じだった。しかも、これが「言いっぱなし」になっているように感じる。国としては手順どおりに進めてきたことで、他国にとやかく言われる筋合いはないという立場なのだろう。しかし、最も影響を受けるのは漁業者や水産事業者という現場だ。言葉だけではなく行動ですぐに向き合わなければならないと感じる。

 ただ、中国側の対応に伴う事態の深刻さがどんどん明らかになってきた翌25日も、首相が積極的に発信した形跡は見えない。この日は、沖縄市で開幕したバスケットボール男子W杯の日本-ドイツ戦観戦などで沖縄を訪れ、試合前のセレモニーにも出席した。日本代表の初陣ですでに決められた日程でもあり、それ自体は批判されることではないかもしれない。ただ、結果的にタイミングは悪かったのではないかと感じる。

 取材した永田町関係者からは「応援する相手が違うのではないか」との声も聞いた。沖縄入りが悪いのではなく、要は、中国側の対応にスピード感を持って対応していない、ということだった。岸田首相に対しては今夏、全国で相次いだ豪雨災害被災地の訪問についても「遅い」との指摘があった。国の少子化対策やマイナ保険証の問題などでも同様だ。スピード感のなさは、もはや岸田首相「あるある」なのだが、今回の問題は、これまでとは少し異なる。岸田首相の「得意分野」で起きている問題だからだ。

 岸田首相は外相経験が長く、第2次安倍政権で1682日を務めた。連続、専任日数では最長だ。今年5月の広島サミットではホスト国として議長を務めたが、立場が人をつくるということなのか、各国首脳とのコミュニケーションなども慣れた様子で、首相自身も「外交の岸田」を自負してきたといわれる。

 一方で、外交の舞台というのは本来、事務方同士の水面下の交渉がベースとなっており、表舞台で展開される「首脳外交」というのは、そんな地道な地ならし上に成り立つと、かつて外交に当たった関係者に聞いたことがある。しかも、水面下の交渉すべてがうまくいくとは限らない。今回の中国側の強硬な態度も、「何を言ってもまったく聞く耳を持たない」(関係者)状態が解消されなかったことが一因とされる、野村哲郎農相が25日の会見で「(全面停止は)大変驚いた。全く想定していなかった」とぶっちゃけ発言したことにも疑問や批判の声が出ているが、ここにも政府内の混乱がにじむ。

 先日の共同通信社の世論調査によると、処理水放出前の岸田首相の説明が不十分だという指摘は、81・9%にのぼったという。首相は、放出方針を表明した22日の関係閣僚会議で「数十年の長期にわたろうとも、処理水の処分が完了するまで政府として責任を持って取り組む」と述べたが、岸田政権以降、いくつもの政権に引き継がれるだろう責任の「決意表明」としては、少し弱い内容だと感じた。加えて、放出後の説明も同様だ。そんな中で公明党の山口那津男代表の中国訪問も延期されるなど、外交にも影響が出てきた。

 新たな「チャイナリスク」を背負う形になった岸田首相。長年培った「外交の岸田」の判断力、発信力を使うのはまさに今でしょ!というタイミングに、岸田首相は今、立たされているのではないかと感じている。【中山知子】

中山知子の取材備忘録

 ■中山知子の取材備忘録

 ◆中山知子(なかやま・ともこ) 日本新党が結成され、自民党政権→非自民の細川連立政権へ最初の政権交代が起きたころから、永田町を中心に取材を始める。1人で各党や政治家を回り「ひとり政治部」とも。現在、日刊スポーツNEWSデジタル編集部デスク。福岡県出身。青学大卒。

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・コラム・「中山知子の取材備忘録」】  2023年08月27日  11:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。


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