【大谷昭宏のフラッシュアップ・09.25】:「ホタテ養殖の仲間は持ちこたえられるか」みちのく漁場に処理水の陰
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【大谷昭宏のフラッシュアップ・09.25】:「ホタテ養殖の仲間は持ちこたえられるか」みちのく漁場に処理水の陰
東日本大震災の取材でお世話になって以来、毎年秋、妻の実家から届くスダチをお贈りしている宮城県南三陸町の漁師さんからさっそくお礼の電話をいただいた。「今年はもう少しましな大きさのものを送れると思うんだあ」。話はすぐに昨年、折り返し届いたサンマのことに。たしかに去年、高い燃料費、赤字覚悟で遠くまで漁に出て取ってきたというサンマは、失礼ながら悲しいほど小ぶりだった。
それが今年はウクライナ問題でここ2年中止になっていたロシアが主張するEEZ(排他的経済水域)内の漁が解禁になり、60隻が漁に出ていて大きめのサンマが期待できるのではないかという。だが、話はすぐに処理水の海洋放出問題に。
「おらとこはカキとワカメだからいいけど、ホタテ養殖の仲間は持ちこたえられるかどうか」という。中国の日本からの水産物全面禁輸が伝わるや値崩れが起き、廃業を考える業者も出ているという。国の漁業補償はあるが、そうしたものより、中国がこれで大儲(もう)けしている乾燥ホタテ加工用の恒久的な施設は造れないものか。だが、そういった声はなかなか届かない。
深刻な問題はまだある。秋口、三陸沖にやってくる大群を追うカツオの一本釣り。欠かせないのは漁場にまく生きたイワシだ。これがないとカツオの群れは寄ってこない。だが、海面水温はいまも異状な高さで、浜のいけすで泳がせているイワシが次々と死んでしまって、出漁時、確保できないのではないかという。
サンマにカキ、ワカメ、ホタテにカツオ、そしてイワシ。浜風がいささかいつもと違う、みちのくの秋の漁場の様子を運んできてくれるようだった。
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◆大谷昭宏(おおたに・あきひろ)
ジャーナリスト。TBS系「ひるおび!」東海テレビ「NEWS ONE」などに出演中。
■大谷昭宏のフラッシュアップ
元読売新聞記者で、87年に退社後、ジャーナリストとして活動する大谷昭宏氏は、鋭くも柔らかみ、温かみのある切り口、目線で取材を重ねている。日刊スポーツ紙面には、00年10月6日から「NIKKAN熱血サイト」メンバーとして初登場。02年11月6日~03年9月24日まで「大谷昭宏ニッポン社会学」としてコラムを執筆。現在、連載中の本コラムは03年10月7日にスタート。悲惨な事件から、体制への憤りも率直につづり、読者の心をとらえ続けている。
元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・連載・「大谷昭宏のフラッシュアップ」】 2023年09月25日 08:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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