「聖母戴冠」はユトレヒト出身のロブレヒト・デ・ノーレとヤン・デ・ノーレ兄弟により、板絵を収める額縁に彫刻され、その頂点では「父」「子」「聖霊」の三位一体の一部をなすキリストが冠を手に母の到着を待ち受ける。絵と額縁が完全な状態で揃った当初の姿は、版画から偲ぶしかない。巨大な石造りの祭壇はフランス革命のさなかに破壊され、祭壇画はフランスに持ち去られた。ナポレオンが敗走した後、絵画は元通りアントワープ聖母大聖堂の主祭壇に安置された。
「下絵」では祭壇画の構図案がほぼ固まっているため、初期段階のものではなく、ルーベンスが板絵を描き始める直前の作である可能性が高い。油彩のスケッチに見られる躍動感は、大きな板に移されて勢いが幾分減じてはいるが、聖堂の板絵は大筋で「下絵」に沿ったものとなっている。絵具が渇かないうちに引っ掻いてつけた計測の目印と、小さな釘を打った跡から、ルーベンスが構図を板に転写するのに遠近法を活用したグリッド(ます目)を用いたと考えられる。」
(『オランダ・フランドル絵画の至宝-マウリッツハイス美術館展』公式カタログより)
→続く
「下絵」では祭壇画の構図案がほぼ固まっているため、初期段階のものではなく、ルーベンスが板絵を描き始める直前の作である可能性が高い。油彩のスケッチに見られる躍動感は、大きな板に移されて勢いが幾分減じてはいるが、聖堂の板絵は大筋で「下絵」に沿ったものとなっている。絵具が渇かないうちに引っ掻いてつけた計測の目印と、小さな釘を打った跡から、ルーベンスが構図を板に転写するのに遠近法を活用したグリッド(ます目)を用いたと考えられる。」
(『オランダ・フランドル絵画の至宝-マウリッツハイス美術館展』公式カタログより)
→続く