たんぽぽの心の旅のアルバム

旅日記・観劇日記・美術館めぐり・日々の想いなどを綴るブログでしたが、最近の投稿は長引くコロナ騒動からの気づきが中心です。

2019年『ラブ・ネバー・ダイ』_思い出し日記(3)

2019年05月13日 18時04分38秒 | ミュージカル・舞台・映画
 初演は三回観劇しましたが縁がなかった田代万里生さんラウル。ようやく会えました。さすがのいいお声。やさぐれ具合がすごかったなあ。観客は、グスタフがラウルの子ではないということをクリスティーヌとファントムの「月のない夜」で知るわけですが、ラウルはメグジリーに撃たれたクリスティーヌが亡くなるときまで知らないわけで、なんとも哀れ。どうしてラウルが酒におぼれるようになってしまったのかはわかりません。ひとこともことばを発することなく、ファントムが自分の父親であると知らされたグスタフがファントムの仮面を外し、頬をなでるシーン。ラウルはどんな思いでみつめているのか。冷静に物語を考えるとラウルにはかなり酷だなあと思います。冷静に考えず、豪華な舞台装置と衣装で彩られたファンタジアの世界に浸ればいいのですが、ふと冷静に考えると物語はなかなかです。


 マダム・ジリーの鳳蘭さんにも初演に続いて会えました。タータン(香寿たつきさん)とは違う、すごく湿り気感のあるマダム・ジリー。ファントムに裏切られた悔しさを現わすところの表情がいい意味ですごく陰湿。一幕のラストをひとりで背負う場面はさすがの存在感でした。立っているだけで場が埋まります。小学生のころテレビでみたベルばらに出演されていた鳳蘭さん。こうして舞台で拝見できることそのものが感動。タータンのマダム・ジリーにも会いたかったですが1回限りの今回は鳳蘭さんに会えてよかったかな。


 市村正親さんは卒業を宣言した『ミス・サイゴン』にまた来年エンジニアとして戻ってくるそうな。ほんとにすごい。前回最後と思いましたがこれはまた見逃せない舞台になりそうです。







2012年『マウリッツハイス美術館展』_「聖母被昇天(下絵)」(3)

2019年05月13日 10時09分35秒 | 美術館めぐり
「作品には使徒と聖女が興奮した様子で聖母の開かれた墓に群がる様子が描かれている。空の墓を信じられないといった面持ちで見つめる者があれば、事情を察し、天使たちに囲まれて輝かしい光を放ち天国に昇ろうとするマリアに向かって両腕を上げる者もある。天使の掲げるふたつの花輪は、マリアが戴冠して「天の女王」となる瞬間が間近に迫ったことを示す。カトリック改革が行われた時期には、聖母マリア信仰が以前よりはるかに熱を帯び、聖書以外の伝える聖母被昇天の場面は多くの人々の心を捉えた。ルーベンスはアントワープとブリュッセルの様々な教会用に、この主題による祭壇画を制作している。石造りの寝室や空の墓に奇跡のように現れた花などのディテールの多くは、13世紀の作家ヤコブス・デ・ヴォラギネの名高い『黄金伝説、あるいは諸聖人の生涯』から借りたものである。油彩のスケッチでは埋葬用の白い布を手にひざまずく女性が、右手に幾輪かのバラの花を握っている。画面左の赤い布を着けた男性は、死後の母の世話を託された洗礼者ヨハネを表す。天に向かってヨハネが差し延べる腕は、天空のマリアを囲む天使の輪と、墓をとりまく地上の民とをつなぐ重要な要素となっている。

 ルーベンスは構図の準備に描いた油彩のスケッチに強い愛着を持ち、常に手許に置いていた。このことは、1640年に亡くなるまで、スケッチの多くがルーベンス本人によって所持されていた事実からもうかがえる。巨匠が心の赴くまま自在に筆をふるった習作が昔からコレクターや美術愛好家の間で高い人気を誇ってきたのも、驚くにはあたらない。」


(『オランダ・フランドル絵画の至宝-マウリッツハイス美術館展』公式カタログより)


「オランダがスペインから独立を果たす16世紀末、経済・文化の中心は南ネーデルランド(フランドル、ほぼ現在のベルギー)にあった。そのフランドルを代表する画家がルーベンスである。ルーベンスは、裕福な行政官の家に生まれ、アントワープで育ち、1600年から8年間イタリアに遊学。初期バロックの天才カラヴァッジオの画法も学んだ。ネーデルランドに帰国後、ルーベンスは大工房を構え、その成果を宗教画や肖像画に結実させる。強烈な明暗法、劇的な構図、豊かな人物表現、華麗なバロック様式。外交官という立場もあり、その名声は内外に知れ渡った。」

(『週刊世界の美術館 アムステルダム国立美術館』講談社発行より)

週刊世界の美術館 no.10―最新保存版 アムステルダム国立美術館
講談社
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