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徴用工、沖縄の基地、軍事費… 憲法に違背し続ける政権 2019/8/13 19:44 (JST)updated
株式会社全国新聞ネット 佐々木央 47NEWS編集部、共同通信編集委員
ことしも暑い夏がめぐってきた。74年前の夏、想像の中のオキナワ・ヒロシマ・ナガサキはあまりにも悲惨だ。
国内でも戦地でも、人の命は軽かった。戦争は人を人でないものとして扱い、人を人でないものに追い込んだ。
いったい誰がこのような事態を招来したのか。過去に対する追及を先鋭化させたい気持ちに駆られるが、ここでは現在形の疑問に向き合いたい。
戦後日本はどこを原点として、いまどんな座標にいるのか。それは肯定できるのか。
妥協や揺り戻しはあったにせよ、出発点の一つは1946年11月に公布された現行憲法であろう。日本国憲法の戦争に対する考え方は、いま争点になっている9条よりも、前文によくあらわれている。
前文は最初に国民主権を宣言する。次の段落がいわゆる恒久平和主義だ。
「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」
平和主義は各国の人々への信頼に基礎を置く。誰も戦争なんかしたくない。世界の人々も平和を愛し、公正と信義を大切にしたいと思っている。それを信じようと。
文中に「人間相互の関係を支配する崇高な理想」とある。崇高な理想とはなにか。あとに続く文章が、それを明らかにする。
「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」
専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠になくすこと。全世界の人々が一人残らず、恐怖と欠乏から解き放たれ、平和のうちに生きること。それが崇高な理想だ。
その理想が国家間の原理としてでなく「人間相互の関係」として語られていることに、注目したい。公的な関係だけでなく、職場や学校や家庭を含めたあらゆるレベルで、それは求められる。ハラスメントや虐待、体罰、いじめといった侵害行為はもちろん、夫が妻を、親が子を管理したり支配したりすることも、憲法の掲げる理想に反するのだ。
愛国者の邪論 「平和とは何か」という問いに対して出てくる言葉は、「戦争のない状態」と出てくるのが一般的である。しかし、日本国憲法の上記の部分をよくよく読めば、「平和とは人権が保障されている状態」ということができる!これは
憲法第97条「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。」
憲法第11条「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。」
憲法第12条「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。」
との条項、条文、言葉の意味と歴史に「平和とは人権が尊重されている状態」であることが判る。
憲法前文の次の段落は、国際関係の原則をこう宣言する。
「いずれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」「この法則に従うことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立とうとする各国の責務である」
戦後の日本が目指したのは、人と人、国と国が平等に、信頼に基づいて構築される社会だった。力によって保たれる平和や均衡は、恐怖や専制・圧迫を伴う。それはまた戦争への道に続いている。そのことを当時の日本人は、悲痛な経験とともに学んでいた。
愛国者の邪論 この前文は、以下のように書かれている。
「われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。」
これは国家・民族・宗教・個人は「対等平等」であり、「個人(私)・国家・民族・宗教」を認めてほしいというのであれば、「他の個人(私)・国家・民族・宗教」も認めなければならない!ということを述べている。
いま韓国との間で起きていることは、こうした憲法の理想や国際関係の基本に反していると思う。
安倍晋三首相は原爆忌の6日、広島市で記者会見し、韓国との関係について「(元徴用工問題で)日韓請求権協定に違反する行為を韓国が一方的に行い、国際条約を破っている。約束を、まずはきちんと守ってほしい」と要求したという。
徴用工問題は1965年の日韓請求権協定によって解決済みというのが、日本政府の立場だ。そこで韓国政府も同じ考え方に立って、元徴用工の人たちの個人としての請求権を否定するよう求めている。ここに政府と市民の関係についての、日本政府の考え方がよく示されている。
愛国者の邪論 ここに著者の、日本の側のトリックがあります。それは「韓国政府」は「元徴用工の人たちの個人としての請求権を否定していない」ということを強調していない!ということである。
日本は、安倍政権は、日本政府は、日本国民は、韓国の、韓国政権の、韓国政府の、韓国国民の「元徴用工の人たちの個人としての請求権を否定していない」という立場を尊重しなければならない!
しかし、このことについて「普遍的な、政治道徳の法則」を尊重して実践していないのは、どっちか!ということだ。
このことは、以下の記事で示している。
「韓国側が日韓請求権協定に違反する行為を一方的に行って国交正常化の基盤となった国際条約を破っていることが日韓関係をこじらせている」と安倍晋三首相はウソをつく! 2019-08-07 | 植民地主義と憲法
それを確認するために、米軍・普天間飛行場の辺野古移転にかかわる日本政府の考え方と行動を参照したい。
辺野古移転を基本的に規定しているのは、米国からの用地・施設の提供要請に対して日本側に拒否権のない日米地位協定である。そのうえ、辺野古移転は既に米国に約束してしまっている。だから沖縄県民や、県民に共感する沖縄以外の人がどんなに反対しても、やり遂げなければならない。全国から警察力を動員し、座り込みをする人たちを強制排除してでも。
このようなやり方を正当とする今の日本政府にとって、国家間の約束を優先しない韓国政府はおかしいということになる。中国や朝鮮半島の人々を連れてきて、非人間的で劣悪な、ほとんど生存ぎりぎりの条件で働かせたケースもあったことへの、真摯な反省や謝罪を示すことなく、国家間の約束の履行だけを要求する。
しかし、このような考え方と行動は、あらゆる関係において専制や圧迫があってはならないとする憲法の思想に違背するだろう。
憲法が掲げる理想を「現実を見ない空論」などと批判するのは自由だ。だが、厳然としてそのような憲法があり、99条が閣僚や議員を含むすべての公務員に憲法遵守義務を課している以上、政権がそれを公然と否定する行動を選ぶことは許されないはずだ。
日韓関係や沖縄の基地問題だけではない。軍事費を止めどなく膨張させ、5兆円を突破していることも、力による安全保障を否定する憲法理念を逸脱している。
この夏、戦争に関わる一連の行事を、季節の儀礼としてやり過ごさず、戦後の原点を踏まえて、現在を直視する機会にしたい。(47ニュース編集部・共同通信編集委員佐々木央)
愛国者の邪論 「国家間の約束」の大前提に何があるか!
国家主権・主権国家は「対等平等」であること。国家主権を決定するのは国民主権主義であること!
沖縄問題について言えば、選挙で、県民投票で、何度も民意は、安倍政権に「ノー」を突きつけている。
安倍政権が憲法の大原則である国民主権主義を尊重する政権であるならば、沖縄県民の民意をアメリカ政府に、きちんともの申すべきだろう!
このことは日米地位協定を規定している日米安保条約を見れば明らかである。
今や日米政府・政権は「日本国憲法」ばかりか、「日米安保条約」にすら違反している!
前文 日本国及びアメリカ合衆国は、 両国の間に伝統的に存在する平和及び友好の関係を強化し、並びに民主主義の諸原則、個人の自由及び法の支配を擁護することを希望し、 また、両国の間の一層緊密な経済的協力を促進し、並びにそれぞれの国における経済的安定及び福祉の条件を助長することを希望し、 国際連合憲章の目的及び原則に対する信念並びにすべての国民及びすべての政府とともに平和のうちに生きようとする願望を再確認し、 両国が国際連合憲章に定める個別的又は集団的自衛の固有の権利を有していることを確認し、 両国が極東における国際の平和及び安全の維持に共通の関心を有することを考慮し、 相互協力及び安全保障条約を締結することを決意し、 よつて、次のとおり協定する。
第一条 締約国は、国際連合憲章に定めるところに従い、それぞれが関係することのある国際紛争を平和的手段によつて国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決し、並びにそれぞれの国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎むことを約束する。 締約国は、他の平和愛好国と協同して、国際の平和及び安全を維持する国際連合の任務が一層効果的に遂行されるように国際連合を強化することに努力する。
第三条 締約国は、個別的に及び相互に協力して、継続的かつ効果的な自助及び相互援助により、武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を、憲法上の規定に従うことを条件として、維持し発展させる。
第八条 この条約は、日本国及びアメリカ合衆国により各自の憲法上の手続に従つて批准されなければならない。
第十条 この条約は、日本区域における国際の平和及び安全の維持のため十分な定めをする国際連合の措置が効力を生じたと日本国政府及びアメリカ合衆国政府が認める時まで効力を有する。 もつとも、この条約が十年間効力を存続した後は、いずれの締約国も、他方の締約国に対しこの条約を終了させる意思を通告することができ、その場合には、この条約は、そのような通告が行なわれた後一年で終了する。(引用ここまで)