アンダンテのだんだんと日記

ごたごたした生活の中から、ひとつずつ「いいこと」を探して、だんだんと優雅な生活を目指す日記

サバイバーとしての五嶋みどり

2014年11月09日 | 大学生活
このブログの中で一番人気!? のページというのがあって、これは圧倒的に「対照的なバイオリニスト-諏訪内晶子と五嶋みどり」なんです。

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日常的にこのブログを読んでいる人は、常に新しい記事だけを読むので、そうすると新しい記事だけが上のほうにランクインするのが当たり前なんだけど、ずーっと三位、四位あたりから動かない不思議な記事。つまりは、検索でここに来るということなのでしょう。ビッグネームが二つ並んでるからヒットしたんだろうけど、期待に応えたとは思えないのでなんか申し訳ない(^^;;

ともかく、この記事に書いたように、五嶋みどりのほうはバイオリンに特化した(偏った)育てられ方をしていて、いろんな意味でグレートなマザーに連れられて早いうちから渡米。もちろん世界トップクラスのバイオリニストが育つためには才能+研鑽がどうしても必要なわけで、この幼少期~少女期の過ごし方が大いに世界のMidoriを育てるのに寄与したことは間違いない。

けれどそれは同時に、危険なことだった。本人が幸せになるためにはバイオリンがうまくなりゃいいってほど人間単純じゃないのであって、特に幼いころには従順で才能もあり、親の期待に沿って育ってきた子どもが、思春期を迎えて様々な問題を起こすというのはしばしば起こることだ。

五嶋みどりは、しかし母を金属バットで殴り殺すこともなく、20歳を越えてやや遅い反抗期?に突入した。心を病んで長い入院をしたころはほんとうにしんどかっただろうけれども、そこで挫折して終わりにならず、しっかりトッププレイヤーとして復活した。いやそれ以上の。

録画してあった「プロフェッショナル 仕事の流儀」を今日見た。五嶋みどりが本当に真摯に音楽と向き合い、しかもそれを持続して演奏に教育にプロフェッショナルなパフォーマンスを発揮していること自体が十分感動的ではあるのだけど、彼女が単に「すくすくと」育ってきたバイオリニストなのではなくて、上記のような困難な状況からサバイバルした人であることを考えると、ことのほか感慨深い。

退院したみどりは、新たに音楽とは関係ない学部を選んで大学入学するなど、自力で幅を広げていく。

番組の中では、視野が広がってくるとともに、バイオリンの音色も豊かになったという表現がされていた。実は音楽以外の厚みがバイオリンに生きてくるということは、そうやって体験を広げるうちにさらに身に染みただろうし、もっと心の狭い人ならば、自分のためと思いつつ自分を狭く規定したともいえる母の存在が許せなくなったりすることがあっても不思議ではない。

けれどみどりは、実際どんな葛藤があったか知らないけれど、それを怒りとして持ち続けてしまうのではなくて、社会貢献という面から自分のバランスを取る道を切り開いていったのである。

次の世代の育成、というのは、トッププレイヤーならではの価値が出せる社会貢献だと思う。音大で、あるいはマスタークラスで、音楽祭で、優秀な若手を集めてレッスンや音楽活動をしたとすれば、社会貢献の最大化という意味でも「正しい」と誰もが認めるだろう。

しかしみどりは自分のコンサート、次世代のバイオリニストの育成だけではあきたらず、養護学校の音楽活動支援などに強い意志を持って取り組んでいる。その活動に大きな意義があるとは思うけれど、五嶋みどりがやらなきゃいけないことなの? という疑問は感じてしまった。

でも…番組を最後まで見ると、みどりがこうした活動の中でほんとうに生き生きしているので、これは彼女にとって必然性のある活動なんだなという気がしてくる。隙がない技術の持ち主同士が緊張感を持ってぶつかり合う音楽の場だけで過ごすよりも、プリミティブな意味での音楽の楽しみに直に触れているほうが何か、バランスが保てるというようなことなのかもしれない。

そうだとすれば、そうやって自分のあり方を現実に根付かせ、安定と飛躍を両立させる方法を編み出した五嶋みどりは本当にすごい、天才だ!! と思うのだ。ローティーンのうちにバーンスタインの「あごが落ちる」ような演奏ができてしまった神童が、母にひっぱられる子どもじゃなくなってなお、期待以上に大成する。これが天才じゃなくて何だろうか。いや「天才」というと単なる生まれつきのようで失礼な言葉かもしれない。もっと「強い意志」のようなもの? 適切な言葉が見当たらないけれど。

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コメント (4)
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