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「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

向こう三軒両隣りと失われた”引っ越しそば”の習慣

2015-01-10 06:58:25 | Weblog
わが家の隣に二階建て四室あるミニマンションが昨年暮建った。そのうち二室には入居したらしいが、挨拶もなく誰が住んでいるのか判らない。正月の松飾はしてあるが、顔を見たこともない。その入居者宛ての年賀状がわが家のポストに入っていた。新年で配達人がアルバイトなのかもしれないが、住居表示は明らかに違う。しかし、新しい入居者が表札を出していないから判らず、近隣では一番郵便物が多いわが家に押し込んでいったものらしい。

昔、東京では”引っ越しそば”の習慣があった。江戸時代、庶民の家が長屋造りが多かった頃、新しく引っ越してきた住民は向こう三軒両隣りの家々へそばを配った。そばは”側”にひっかけたものらしく、そばのように細く末長くお付き合いを願いたいという、江戸っ子の洒落でもあった。この習慣は少なくと戦後NHKラジオの人気連続ドラマ「向こう三軒両隣り」(1947年―53年)の時代まではあったように思う。

高度成長期時代、東京の住宅は高層の集合住宅が多くなり、この引越しそばの習慣はなくなった。そば屋さんの出前もなくなったのも影響しているのかもしれない。今では見知らぬ他人からそばが届けば異物でも入っているのではないかと疑ってしまう。しかし、一方では東北大震災で隣近所の”絆”の大切さが再認識されている。

政府が近く発表する「認知症」に関する”国家戦略”では”住み慣れた地域で暮らせる社会を目指す”とある。しかし、向こう三軒両隣りに誰が住んでいるのか判らないでは困る。戦前昭和の東京では、引っ越しの挨拶にそばではなく、手拭いや葉書などを配った。今は時代が変わっているが、せめて顔だけでも出して挨拶したほうがよい。お互いの潤滑油になるのは間違いない。

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