父が認知症になってからもう7年近くになります。
認知症って「絶望の病」といわれているそうですが、もはやかつてのしっかりしていた父には戻れない、どうしてしっかりしていた時にもっと「親孝行」できなかったのか、とお詫びの気持ちで世話している、といえばカッコイイのですが。
もう言いたい放題、やりたい放題で、ヤンチャ盛りっていう感じです。
テレビの「徹子の部屋」で谷崎潤一郎の『細雪』に出演する高橋恵子さんたち4人の美人女優さんを見ていて「きれいなひとたちね」と言葉をかけると、父は「これが普通や!」と恐ろしいことを言うのです。
じゃあ、市場に買い物に行っている女性たちや私なんかは?
父はあの美人女優さんたちが「普通」というのですから、口をはさむのがあほらしくって、笑ってしまいます。
私は以前父に蹴られて(プロレスやボクシングまがいな乱暴者です)ずっと膝が痛み、座ると特に大変です。
先ほどインターネットで「運動しないともっと痛くなる」とあって、軽いストレッチをしていますが、これでも油断するとまた仕掛けてくるので要注意、「どうしてくれるのよ!」と言っても「お前は弱いなあ、もっと鍛えるんじゃ!」
うっかり隙を見せた私が悪いのか・・・それにしてもずっと面倒を見ている私に!
こうして、老人介護のお仕事をなさっている方々の大変さがよくわかります。
突然叩かれたり蹴られたり、というのも経験なさっているんだろうなあ、私は実父だからナントカ我慢できるけれど、お仕事でこんな目にあったら・・・。
頭が下がります。
そして父はあどけない顔をして、私に悪態をつきながらも頼っている、それがまた可愛い!
私が父を大事にしているのは、レイテ戦で弾丸の飛んでくるなかでほとんど一年間、外で暮らしたこと、食べ物は蛇や蛙、夜になっても気温は下がらず、もちろんお風呂もなく・・・終戦をきいたのは12月だった、ジャングルにいたので。
そして帰国、何もない中で家族のために働き通し、結核までなって、それでも働き、妻子を飢えさせることもなく、親を養い、がんばってきたこと。
左手の親指は戦争で飛ばされ、足にも弾がすれたあとがあります。
歯は栄養不良でボロボロ、総入れ歯です。