午後の予定がぽっかり空いていたので、どうしたものかと思案していたら、読売日本交響楽団のコンサートがあることを知りました。ボックス・オフィスに電話して当日券について訊ねたところ、「C席は10席程度しかありませんが、B席以上は余裕がございます」とのことだったので、午後から東京芸術劇場に足を運びました。
(東京芸術劇場5階からの眺め)
なんとかC席をゲットしたかったので、販売開始の30分前に到着。それでも15名ちょっと先客が居たので、C席は無理かなあと思って半ばあきらめ。ところが、自分の順番になっても、その日のC席はまだ2席しか買い手が着いてなかったので、らくらくゲットできました。世の中、自分みたいに安い席ばっかり狙う人でないんですね~。
この日は、東京芸術劇場リニューアル記念と題したG.ロジェストヴェンスキーと読売日本交響楽団によるチャイコフスキー後期交響曲チクルスの最終日。超有名なヴァイオリン協奏曲と交響曲第6番「悲愴」です。東京芸術劇場は以前2回ほど来た記憶がありますが、もう4年以上来ていないので、何がリニューアルなのかは良くわかりません。3階席に入ると、思いのほか大きなホールにびっくり。NHKホール程ではありませんが、近いものがあるかもしれません。
(開演前)
1曲目のチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲。ヴァイオリン独奏は、指揮者と同じ名字のサーシャ・ロジェストヴェンスキー。残念ながら、これは私の好みの演奏ではありませんでした。緩いペースで始まった演奏には、結局、最後まで乗れませんでした。流れるような演奏というよりも、短く切ったような奏法で、音がざらついた感じがします。流れるように聞えるアメリカ英語とアクセントの強いイギリス英語の違いを見ているようでした。また、細部についても丁寧さが感じられず、大味な音に聞えたのは残念でした。個性的と言えば、個性的なのでしょうが、私は好きにはなれません。逆に、オーケストラの方は、おおらかな包みこむような音で、とっても美しいです。でも、それが却って、ヴァイオリンとオーケストラが乖離しているおうな感覚になり、二つの別の音楽を聞いているのかと思ったほどです。お客さん受けは良かったようなので、私の気のせいかもしれません。アンコールもやってくれました。
休憩挟んでの「悲愴」は文句なしの素晴らしい演奏でした。この曲は超有名のわりにはロンドンでは一度も聴く機会に恵まれませんでした。お茶の水博士をほうふつさせるサーシャ・ロジェストヴェンスキーさんの指揮は、ゆっくり目のペースで入り、大きな音楽を紡ぐようなイメージです。指揮台もおかず、手や体の動きも必要最小限なのですが、緩と急、剛と柔のバランスも素晴らしく、オケはしっかりコントロールされています。指揮者と奏者の互いの信頼感を感じるものでした。
特にどこのパートが目立ったというよりは、弦、金管、木管、打楽器それぞれが、持ち味を十分に出し切った演奏でした。興奮とドキドキ感のある演奏は大満足です。
読響はこれで帰国後2回目ですが、弦パートがとっても熱い演奏をしているのが印象的です。音も重層的で、厚く、大きい。金管や木管も、目立つところは目立ち、抑えるところは抑えて好感度高いです。私としては、お行儀いいN響よりも好みかも。
最後の最後、第4楽章が終わろうとする寸前に、客席からくしゃみとも咳とも取れる大きなノイズがホール一杯に響いたのは、本当に残念でした。いくら何でもこのタイミングはないだろう。第3楽章の打楽器、金管のドンチャン騒ぎの時にやってもらえれば、良かったのに。
あと、印象的だったのは、3階席の音の良さ。それなりにステージとの距離はあるのですが、十二分に響きます。3階席としては、NHKホールはもちろんのこと、ロイヤルフェスティバルホールやバービカンホールの3階よりも明らかに良いと断言できます。東京芸術劇場はC席で充分かもしれません。
(終演後)
東京芸術劇場リニューアル記念
G.ロジェストヴェンスキー&読売日本交響楽団
チャイコフスキー後期交響曲チクルス
2012年10月08日 (月)15:00 開演
東京芸術劇場 コンサートホール
曲目
チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲ニ長調
チャイコフスキー/交響曲第6番ロ短調「悲愴」
出演
指揮:ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー
ヴァイオリン:サーシャ・ロジェストヴェンスキー
管弦楽:読売日本交響楽団