その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

映画 「炎のランナー」

2013-01-17 02:31:50 | 映画


 最近、ロンドンで観きれなかったイギリス映画のDVDをTSUTAYAで借りて、せっせと観てます。今回は「炎のランナー」。実は、高校生の時に映画館で観たことがあります。ただ、当時の体育会脳の私には、主人公たちがオリンピックで勝利するスポンコンドラマぐらいにしか理解できませんでした。物語の底流に流れる欧州ユダヤ人の環境や信仰の問題といったところは全く無頓着に、俳優たちが着ているクリケットセーターやツーイドのジャケットばかり目が行っていた映画です。

 今回20数年ぶりにこの映画を観ましたが、物語はほとんど覚えておらず、初めて観る感覚でした。ユダヤ人として潜在、顕在の差別を経験しながらも、走ること、勝利にこだわることで、イギリス人になろうとするハロルド・エーブラムス。そして、神のために走り、オリンピックでさえも信仰に基づき、休息日の日曜日にはレースには出ないスコットランド人宣教師エリック・リデル。実在の二人のオリンピック・ランナーを軸に、パリ・オリンピックへの道のりを通じて20世紀初頭のイギリス社会の一面を描いています。

 初見から20数年を経て、さすがに内容の奥深さは分かるようになりましたが、なかなか深いところまで理解するのは難しい映画という印象です。物語の軸となるハロルドのユダヤやアイデンティティへのこだわりやエリックの信仰の問題は、理屈としては理解しているつもりでも、グーっと感情移入できるほどの共感まではできません。ただ、理解度は差し置いても、美しいイギリスの風景や建物、そしてドラマティックなレースシーンなどは非常に洗練された映像で、純粋に映画に感動します。

 昨夏のロンドンオリンピックの開会式のアトラクションにも使われていた美しいテーマ音楽も素晴らしく、良質な映画であることは間違いない(何と言ってもアカデミー作品賞も受賞)のですが、文化・宗教背景的に日本人の腹に落ちるのは、少し難しい映画という感想でした。



炎のランナー
Chariots of Fire
監督 ヒュー・ハドソン
脚本 コリン・ウェランド
製作 デヴィッド・パットナム
製作総指揮 ジェイク・エバーツ
ドディ・ファイド

出演 ベン・クロス (Harold Abrahams)
イアン・チャールソン (Eric Liddel)
ナイジェル・ヘイヴァース (Andrew Lindsey)
ニコラス・ファレル (Aubrey Montague)
ダニエル・ジェロール (Henry Stallard)
シェリル・キャンベル (Jennie)
アリス・クリージ (Sybil)
ジョン・ギールグッド (Trinity Provost)
リンゼイ・アンダーソン (Caius Master)
ナイジェル・ダヴェンポート (Lord Birkenhead)
ストルーアン・ロジャー (Sandy)
イアン・ホルム (Sam)
パトリック・マギー (Lord Cadogan)
デニス・クリストファー (Charles Paddock)
ブラッド・デイヴィス (Jackson Scholz)
デイヴィッド・イエランド (Prince of Wales)
ピーター・イーガン (Duke of Sutherland)

スタッフ - 炎のランナー
監督 ヒュー・ハドソン
脚本 コリン・ウェランド
製作総指揮 ドディ・フェイド
製作 デイヴィッド・パットナム
撮影 デイヴィッド・ワトキン
美術 ロジャー・ホール
音楽 ヴァンゲリス
編集 テリー・ローリングス
衣裳デザイン ミレーナ・カノネロ
メイク メアリー・ヒルマン
選曲 ハリー・ラビノウィッツ
字幕 戸田奈津子

コメント (6)
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