その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

スタインバーグ/N響: スメタナ 交響詩「わが祖国」(全曲)

2017-05-17 08:00:00 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


 代々木公園のタイ・フェスティバルの人混みをかき分け、NHKホールへ。

 スメタナの「わが祖国」は、1年半前のNHK音楽祭でビエロフラーヴェクさん指揮、チェコフィルの演奏で聴いて以来です。今回の指揮スタインバーグさんは、以前は頻繁にN響に登場していたようなのですが、私には記録も記憶も無いので、きっと初めて。とっても長身でがっちりされた体格で、3階席からも不思議なオーラを感じる方でした。

 この日もN響は好調で、熱くかつ安定した演奏でした。既に、多くの方がツイッターなどで仰ってますが、ボヘミアの香りがプンプン匂うと言うよりも、洗練された美しい音楽作り。ダイナミックかつ美しい音楽そのものを十分に味わうような演奏でした。

 それでも音楽からチェコの歴史的重みが感じられるのが、この楽曲の凄さなのでしょう。先日、「ミュシャ展」で観た《スラブ叙事詩》の絵と「わが祖国」の音楽がダブり、脳の中で結合されて、壮大な歴史絵巻を見るようです。冒頭のハープの調べは、まさに絵巻の始まりに相応しい。プラハ近郊の王城の盛衰を描いた第1曲〈高い城(ヴィシェフラド)〉やフス戦争でのチェコの反乱軍「ターボル派」を描いた第5曲〈ターボル〉などは、《スラブ叙事詩》でも描かれており、音楽に乗って絵が動き出すような感覚でした。チェコの困難な歴史を、書籍などの文字情報として左脳で学ぶのではなく、右脳で受け止めたという感じです。

 終演後の大きな拍手で、スタインバーグさんは何度も呼び戻され、満足な表情。私も一杯に拍手を送りました。

 ただ、やっぱりNHKホールは鬼門ですね。終演後の満ち足りた雰囲気もタイフェスティバルでの演舞の音楽、スピーカーから弾けるMCの声、はたまた代々木公園でのロックンロールの爆音と、決してそれら自体は悪いわけではないのですが、余韻を100%吹き飛ばすのには十分です。こちら都合ではありますが、参りますね~。こういう日は、どうやって帰ればいいのだろう?放送センターからのバスに乗るしかないのかな。


第1860回 定期公演 Aプログラム
2017年5月14日(日) 開場 2:00pm  開演 3:00pm
NHKホール

スメタナ/交響詩「わが祖国」(全曲)
 
指揮:ピンカス・スタインバーグ

No.1860 Subscription (Program A)
Sunday, May 14, 2017  3:00p.m.  (doors open at 2:00p.m.)
NHK Hall

Smetana / “Má vlast”, cycle of sym. poems (complete)

Pinchas Steinberg, conductor

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