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時機を得た本である。偶然だが、読んだタイミングも、先日、身代金要求型のウイルスによる世界規模の大規模サイバー攻撃が発生したばかりであり、絶妙だった。
ゼロディ脆弱性とは、対策が講じられていないソフトウエアの脆弱性のこと。修正プログラム提供前だから、攻撃者は標的の中に容易に入るこむことができる。米国では地下でそうした情報が売買されたり、米国家安全保障局(NSA)が買い漁り、敵対国に対して攻撃を仕掛ける。まさにサイバー戦争である。
本書は、ゼロディ攻撃のほかにも、核燃料施設などのインフラを破壊するマルウエアであるスタックスネットなども紹介している。国家間や民間も巻き込んだ、有象無象の陰謀や謀略がグローバルにうごめいている。スノーデンの暴露により、こうしたNSAのスパイ行為は白日のもとにさらされたので、今となってはここで報告されるサイバー戦争が単なるトンデモ情報として笑う人はいないだろう。そして、今や米国だけでなく、ロシア、中国、イスラエル、北朝鮮にサイバー世界での覇権を争っている。
テクニカルで専門的になりがちなITやネットワークセキュリティのテーマを、難しい言葉はほとんど使わずに、わかりやすく書かれている。読み物として抜群に面白い。断片的にネット等で読む内容もあるが、こうして1冊にわたって書かれたものを読むと、その脅威が良くわかる。悪用されるかどうかは別として、インターネット上で秘密を守るということはまず不可能と思って方がよさそうだ。
暴力的な兵器は使わずとも、この世の中の機能を停めることができる。恐ろしい世の中になったものである。
目次
二〇××年末、東京
ナタンズの姿なき攻撃者
スタックスネットを見破った男
二一世紀のマンハッタン計画
「デジタル・パールハーバー」が起こる日
「ムーンライト・メイズ」と「タイタン・レイン」
アメリカが誇る世界最強のサイバー軍団
インフラを狙え!
暗躍するNSAと「サイバー兵器」
「ゼロデイ」が生んだ、新しい死の商人
小さなサイバー大国イスラエル
サイバー空間の新世界秩序
ロシアがトランプ大統領を誕生させた
二〇一七年、そのとき日本は…