昨年の「他重人格」に続いて、舘そらみさんの作品を観る。「ガレキの太鼓」という舘さんが主宰する劇団の復活公演とのことだ。
話は、とある若者夫婦の夫くんが、余命宣告をされて、過去に例がない最高の葬式がやりたいということで、自分の葬式のリハーサルをやることにした。そこで巻き起こる一連の物語。「死」や「葬式」というテーマは重いが、真面目に面白い演劇である。
まあ幸せなことだが、普段自分の「死」「葬式」なんて考えたこともないから、目の前の舞台で繰り広げられる芝居を観ながら、常に「自分だったら・・・」を問う自分がいた。毎日を生きるってことは、毎日「死」に向かっていることでもあるんだよね。
公演初日だったけど、俳優さんたちの落ち着いた熱演が目を引いた。特に、奥さん役の村井まどかさんは、やや幼稚とも見える夫の希望に誠心誠意応えようとする様子が切ない。「他重人格」にも出演されていたが、そこでも、誠意をもって夫とコミュニケーションを図る若奥さんの役柄をやっておられたが、とっても嵌っている。
普段考えないようなことを考える興味深い演劇だったのだけど、あえて、ちょっと物足りなさを言うと、余命宣告をされ、葬式のリハーサルをやりたいと言い出す夫くんである。葬式のリハーサルは面白いテーマ設定だけど、どうも、「葬式のリハーサル」なるものが余命宣告を受けた人がするリハーサルと言うよりも、むしろまだそんなことを考えたこと無いような人が行うリハーサルのようだった。余命宣告されているには、なんかリアリティが無いのである(少なくとも、無いように見える)。自分の周りに余命宣告された人が身近にいたわけでは無いので、あくまでの想像の域を出ないのだけど、自分が余命宣告されたら自分の葬式のことよりも、残された日々をどう生きるかを考えるんではないかなあ~
舞台を劇場の真ん中に置き、観客が四方から舞台を囲むような配置は向かいや左右の観客の反応も分かり、一体感が出る。観客席は2列しかなく、ほぼ満席であるもののキャパは総勢50名強ほどのアットホームな雰囲気だからなおさらだ。目の前で芝居が展開し、俳優さんの息遣いまでが伝わってくる。このライブ感の興奮は、ちょっと大劇場のオペラや芝居ではとても味わえない楽しさだった。
⦅観劇後、劇場近くの偶然入った定食屋さんのヒレカツ定食。目茶旨かった⦆
※以下、「ガレキの太鼓」HPから抜粋
【復活公演】3年の沈黙を破り、再始動!この世界の胸ぐら掴んで抱きしめる。
■あらすじ
「いつ死ぬかわかんないもんね」
「でも明日も生きる気しかしないんだけど」
まだまだ生きるくせに俺たちは、最高の葬式の夢を見たーー。
小劇場から尻尾巻いて逃げ、いつの間にか映像脚本やWEBコラムばかりを書いていた舘そらみがホームグラウンドで膝を震わせながら数年ぶりに筆を取るハイテンション冠婚葬祭ロードムービー。
(本作は演劇公演です)
地上10センチ
作・演出 舘そらみ
■出演者
石川彰子(青年団)
海老根理(ガレキの太鼓)
岡慎一郎
尾﨑宇内(青年団)
小瀧万梨子(青年団/うさぎストライプ)
小林樹(カムヰヤッセン)
酒巻誉洋
日比野線(FunIQ/劇団半開き)
村井まどか(青年団)
■日時 2018年3月8日(木)-18日(日)
■会場 こまばアゴラ劇場