その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

東京二期会 ヴァイグレ指揮「サロメ」 @東京文化会館

2019-06-10 07:30:00 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

東京二期会によるオペラ「サロメ」を観に東京文化会館に出かけた。二期会は一昨年同じヴァイグレ、読響のコンビで素晴らしい「ばらの騎士」を魅せてくれただけに、同じシュトラウスのオペラということで大いに期待して出かけた。

 公演は非常にレベルの高いもので大満足。歌手陣では、出ずっぱり、歌いつづめのサロメを日本人歌手がどう演じるかを心配半分、楽しみ半分だったけど、頭を尼さんのように完全に丸めた(この演出の意味は良く分からずじまい)森谷真理さんが、怪演とも言える大熱演で見事に歌い、演じきった。少女から大人への女性への変化を追うというより、妖気性が先行したようにみえた今回のサロメは個人的好みからは外れたものだったが、「7つのヴェールの踊り」から終幕まで森谷さんの独壇場で、私はその「気」に完全に飲まれ、固唾をのんで聞き入った。その他の歌手陣も大編成の読響オケに負けることなく、夫々の存在感を発揮していた。

 歌手陣同等かそれ以上に特筆すべきは、ヴァイグレと読響の演奏。「ばらの騎士」でよろめくようなうっとりする音楽を聴かせてくれた記憶がまだ新しいこのコンビだが、ここでは物語の猟奇性が持つ緊張感とシュトラウスの美しいメロディを、官能的に融合させた素晴らしい音楽を聴かせてくれた。サロメの音楽の美しさを再認識させられた演奏で、ブラボーである。

 デッカーの舞台は、舞台いっぱいに30階ほどの中央に裂け目のある階段を仕立て、裂け目の奥にヨカナーンが幽閉されている設定。色合いは殆どが白と黒とグレーであり、シンプルだが場面の異常性が浮き出る形になっている(どっかで似た雰囲気の舞台を観たと思って帰って調べたら、ロイヤルオペラで観た「ピーター・グライムズ」の演出がデッカーだった)。ただ、4階席右サイドの私の席からは階段の上部や右サイドの動きが死角になって全く見えなかったのは残念だった。また、「七つのヴェールの踊り」の動きは階段を上り下りや階段での左右の動きはあるものの、「踊り」に刃物だったので程遠いものだったので、「踊り」の演出を楽しみにしていた私にはやや拍子抜け感があったのも事実。

 ただ、そういったちょっとした不満をかき消すに十分の歌手陣とオケの熱演であり、(これまた非常に残念だったのだが)寂しめの観客席からも大きな拍手が寄せられ、私も手が痛くなるほどの拍手を送った。

 

 

サロメ〈新制作〉
オペラ全1
日本語字幕付き原語(ドイツ語)上演
原作:オスカー・ワイルド
ドイツ語台本:ヘドヴィッヒ・ラッハマン
作曲:リヒャルト・シュトラウス
会場:東京文化会館 大ホール
公演日:201968() 14:00

スタッフ

指揮:セバスティアン・ヴァイグレ
演出:ヴィリー・デッカー
演出補:シュテファン・ハインリッヒス
舞台美術:ヴォルフガング・グスマン
照明:ハンス・トェルステデ
演出助手:家田
舞台監督:幸泉浩司
公演監督:佐々木典子
公演監督補:牧川修一

 

キャスト

ヘロデ:今尾
ヘロディアス:池田香織
サロメ:森谷真理
ヨカナーン:大沼
ナラボート:大槻孝志
ヘロディアスの小姓:杉山由紀
ユダヤ人1:大野光彦
ユダヤ人2:新海康仁
ユダヤ人3:高柳
ユダヤ人4:加茂下
ユダヤ人5:松井永太郎
ナザレ人1:勝村大城
ナザレ人2/奴隷:市川浩平
兵士1:大川
兵士2:湯澤直幹
カッパドキア人:岩田健志

演奏:読売日本交響楽団

SALOME

Opera in one act

Sung in the original language (German) with

Japanese supertitles

Libretto in German by Hedwig Lachmann

based on the French play “Salomé” by Oscar Wilde

Music by RICHARD STRAUSS

 

SAT. 8. 14:00 June 2019

at Tokyo Bunka Kaikan (Japan)

 

STAFF

Conductor: Sebastian WEIGLE

Stage Director: Willy DECKER

Associate Stage Director: Stefan HEINRICHS

Set & Costume Designer: Wolfgang GUSSMANN

Lighting Designer: Hans TOELSTEDE

Assistant Stage Director: IYEDA, June

Stage Manager: KOIZUMI, Hiroshi

Production Director: SASAKI, Noriko

Assistant Production Director: MAKIKAWA, Shûichi

 

CAST

SAT. 8. Jun.

Herodes: IMAO, Shigeru

Herodias: IKEDA, Kaori

Salome: MORIYA, Mari

Jochanaan: ÔNUMA, Tôru

Narraboth: ÔTSUKI, Takashi

The Page of Herodias: SUGIYAMA, Yuki

First Jew: ÔNO, Mitsuhiko

Second Jew: SHINKAI, Yasuhito

Third Jew: TAKAYANAGI, Kei

Fourth Jew: KAMOSHITA, Minoru

Fifth Jew: MATSUI, Eitarô

First Nazarene: KATSUMURA, Daiki

Second Nazarene /A slave: ICHIKAWA, Kôhei

First soldier: ÔKAWA, Hiroshi

Second soldier: YUZAWA, Naoki

A Cappadocian: IWATA, Takeshi

 

Orchestra: Yomiuri Nippon Symphony Orchestra

 

コメント
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