ゴールデンウィークに奈良の室生寺、長谷寺を訪ねたが、それらに阿部文殊院と岡寺を加えて、いずれも7〜8世紀に創建された古刹が保有する仏像の企画展示が東博で開催されている。
東博への入場料だけで見学できる。展示品は多くはないだが、質が高くお勧めだ。
嬉しかったのは、室生寺の金堂で見たばかりの十二面観音像と地蔵菩薩に再会できたこと。お堂で観るのが本来なのだろうが、照明等で鑑賞用に展示してある両仏はひときわ芸術品として美しく映える。十二面観音の薄く残った色合いもお堂の中よりはっきり見える。平和で、豊かなご尊顔も良い。地蔵菩薩は菩薩さまもさることながら、光背の模様・美しさに今更のように気づいた。お堂の中で30分居座ってみていたはずなのに、全然見ていなかったようだ。現場には現場でなければ存在しない「気」が漂い、その中で全身全霊的に仏像を受け止めるが、博物館での展示になったとたんにそうした精神性は失せ一つの芸術品となる。どっちがいい/悪いを言うものではないと思うが、まだ現場の記憶・体感が新しいこのタイミングで、違いを実感できたのは興味深かった。
長谷寺の仏たちも、長谷寺ではご本尊の巨大観音の印象が強すぎたので、どの仏像もあまり記憶がなかったが、非常に繊細な仏像たちだ。
行けなかった岡寺の義淵僧正坐像がまるで本物の人と対しているようで怖いぐらい。
お勧めです。
2019年6月21日訪問