この秋、『デジタルトランスフォーメーション(DX)の組織的影響』について勉強する、短期の異業種勉強会に参加している。アカデミックな香りも漂う会なのだが、そこの参考図書として挙げられていた1冊。
2004年発行の書籍(原著は2003年)ということで20年前の本なので、かなり古く、今更という感じもしなくてもないが、今でこそコンセプトや方針としては当たり前になっている「オープン・イノベーション」の走りとなった文献とのことだ。第2次大戦後の企業発展を支えたクローズド・イノベーションは、労働者の流動性の高まり、高学歴者の増、ベンチャー企業の発展、製品開発スピードの早期化、顧客やサプライヤーが賢くなったこと等から維持可能とは言えなくなった。変わって「アイディアを商品化するのに、既存の企業以外のチャネルを通してもマーケットにアクセスし、付加価値を創造する」オープンイノベーションの時代になった。本書は、オープンイノベーションの特質を考察し、IBM・インテル・ルーセントの事例を示す。そして、その成功のための戦略と戦術を探る1冊だ。
今となっては、インターネットやクラウド、ソフトウエア化の進展でオープン化の流れは当時よりも加速しているし、日系企業でも事業連携等に拠るオープンイノベーションを歌っていない会社は少ないだろうし、私が所属する企業グループの親会社も相当、鼻息荒い。なので、今の時代で書籍にするなら、日系企業などでの成功や失敗の様々な事例を集め、分析し、成功と失敗の要因を探って、今後の在り方を考えるような内容が求められるだろう。なので、本書は一般論過ぎて、物足りないといえば、物足りなかったのだが、まずは研究や導入の歴史を振り返るという点においては、抑えておくべき1冊のようだ。