その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

ブロムシュテット祭 最終日: N響10月Cプロ、指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット、シューベルト交響曲第7番/第8番

2024-10-29 07:30:24 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

10月のブロムシュテット祭もいよいよ最終プログラム。この1カ月、トラブル無く完走頂いたことに感謝の気持ちで一杯だ。もっとも団員さんのポストだと、「団員は厳しいリハーサルに疲労困憊になっていく一方で、マエストロは日増しに元気になっていく」、ということらしいので、どういうメンタルとフィジカルを持ったかたなのだろう。ドジャースの大谷翔平くんも翁には叶わない。

Cプログラムはシューベルトの交響曲7番〈未完成〉と8番<ザ・グレート>のカップリング。私の音楽を聴く力と筆力では、書けば書くほど原体験が損なわれるので、多くは書けないが、今回の「祭」の最終を飾るに相応しいプログラムであり、演奏であった。2曲とも、音楽ってこんなに純粋で、美しく、深遠なんだと、感じさせてくれた。感情と構造の調和、一音一音に籠められた意思が現れる力強さ、そして紡がれる音楽の若々しさ。道を究めて、悟りを開きながらも、更に高みを目指す。そんな姿勢も見て取れる。

N響の演奏も憑かれたような集中力を示していた。川崎コンマスの力強いリードとともに、弦陣のアンサンブルはただ美しいとか、揃っているとかとは別物の一体感あって、有機的で前向きな動きを感じた。8番での吉村さんのオーボエソロを始め、管陣の音色も音の中に自らが溶けこんでいくような感覚になる。弦・管・打それぞれが嚙み合って音楽が流れて行く交響楽の醍醐味だった。

〈ザ・グレート〉の第4楽章はフィナーレに向かう翁とオケの気合が最高潮に達して、異次元の空間が生まれる。聴いている者にもこみ上げるものがある。繰り返しは、ずーっと何度も繰り返してほしい。この幸せな時間が終わってほしくない、そんな気持ちだった。

満員のNHKホールは、満員とは思えない静まりの中でステージを見つめ、耳を傾ける。これだけステージと聴衆が一体となった空間は本当に素晴らしい。終演後の拍手は演奏への感動以上に、感謝の気持ちが一杯につまったもので、翁にとっても、旅の思い出としてしっかり持って帰って頂けるのではと思った。

来年のプログラムにも既に翁の名前は記されている。健康第一で。その次で良いので、来年の再会を心から待ち望みたい。

 

定期公演 2024-2025シーズンCプログラム
第2021回 定期公演 Cプログラム
2024年10月26日(土) 開演 2:00pm [ 開場 1:00pm ]

NHKホール

PROGRAM 曲目
シューベルト/交響曲 第7番 ロ短調 D. 759「未完成」
シューベルト/交響曲 第8番 ハ長調 D. 944「ザ・グレート」

指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット

Subscription Concerts 2024-2025Program C
No. 2021 Subscription (Program C)
Saturday, October 26, 2024 2:00pm [ Doors Open 1:00pm ]

NHK Hall

Program
Schubert / Symphony No. 7 B Minor D. 759, Unvollendete (Unifinished Symphony)
Schubert / Symphony No. 8 C Major D. 944, Große (The Great)

Conductor
Herbert Blomstedt


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 経験の無いブーイングの嵐・... | トップ | 今年も応援団に背中を押され... »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。