たまに無性に見たくなる定番オペラの1つが「カルメン」。登場人物にはあまり共感できない(ミハエラ除く)が、ビゼーの音楽が素晴らしい。今回は沖澤のどかさんと読響による演奏に魅かれ、4年ぶりに観劇(初日)。主要歌手陣、合唱団、オケ、演出がしっかりまとまった好演でした。
歌手陣は突出した方は居ませんでしたが、皆さんそれぞれ持ち味を出して、いい仕事をされてました。
題名役の加藤のぞみさんは初めて聴く方ですが、力強い芯のあるメゾソプラノの歌声は、カルメンの強さととってもマッチしてます。演技も堂々たるもの。ドン・ホセ役の城宏憲も美声のテナーで優男ぶりを発揮。声は素晴らしいのですが、ちょっと一本調子のところも感じられ、表現にもっと変化があればもっと良い気がしました。ミカエラの宮地江奈さんは純度の高い美しいソプラノで役柄にぴったり(小学生の遠足のような衣装は首をかしげましたが)。印象深かったのは、エスカミーリョの今井俊輔さんで、立派な体躯(着膨れかどうかは?)から歌われる声は迫力満点で、コミカルな演技も個人的に好み。カルメンはエスカミーリョが良いと、上演の厚みが増すので嬉しかった。
児童合唱も含めた合唱団も素晴らしいハーモニーでした。多くの人数を揃えたロマの一団による合唱は迫力たっぷりで、ホール一杯に響く合唱はとっても心地よいです。
今回1番のお目当てであった沖澤のどかさんが振る読響は、期待に応えた見事なタイムリーヒット。沖澤さんの指揮は、演奏会で2度聴いていますがオペラは初めて。小柄な体格を倍以上に感じさせる大きな指揮ぶりから繰り出される音楽は、とっても自然体で癖がなく体に素直に染み込んでいきます。読響との息もぴったりで、カルメンの躍動感、疾走感を存分に味わいました。作品の良さをしみじみ感じられる嬉しい演奏です。
舞台造形は、第1幕がセビリアのたばこ工場にはとても見えない荒野の設定になっていて、ずっこけて始まりました。2、3幕の間違いではと思ったり、その後も3幕も現代風のネオンセットがあったりして、時空の違和感があったのですが、プログラムには場所・時間を特定しない近未来設定との解説があるようです。ただ舞台設定が音楽や物語の進行を妨げるようなものではなかったし、照明等は美しく舞台が照らされていましたので、違和感はあったものの大きく気にはなりません。むしろ、闘牛場外の場面でダンスチームによるダンスを活用したのが、私としてはとっても好みでした。
終演後は、9割方は埋まった観客席から大きな拍手が寄せられました。演出家がカーテンコールに登場した際は、多少のブーイングも混じっていましたが、ブーイングってほどじゃないよねとの個人的感想です。昨年の同じ二期会公演の「影のない女」にはやられましたが、今回は定番オペラを定番ならではの良さをしっかり味わえる公演で、満足感一杯でホールを後にしました。
※カーテンコールの写真撮影がOKなのもとっても嬉しかった。
カルメン
<新制作>
オペラ全4幕 日本語および英語字幕付原語(フランス語)上演
2025年2月20日(木)
原作:プロスペル・メリメ 小説『カルメン』
台本:リュドヴィック・アレヴィー及アンリ・メイヤック
作曲:ジョルジュ・ビゼー
staff
指揮:沖澤のどか
演出・衣裳:イリーナ・ブルック
装置:レスリー・トラバース
照明:喜多村 貴
振付:マルティン・ブツコ
衣裳補:武田園子
合唱指揮:河原哲也
演出助手:彌六
舞台監督:村田健輔
技術監督:大平久美、村田健輔
公演監督:永井和子
公演監督補:大野徹也
Cast
カルメン:加藤のぞみ
ドン・ホセ:城 宏憲
エスカミーリョ :今井俊輔
ミカエラ:宮地江奈
スニガ :ジョン ハオ
モラレス:室岡大輝
ダンカイロ:北川辰彦
レメンダード:高田正人
フラスキータ:三井清夏
メルセデス:杉山由紀
合唱:二期会合唱団
児童合唱:NHK東京児童合唱団
管弦楽:読売日本交響楽団
CARMEN
[New Production]
Opera in four acts
Sung in the original language (French) with Japanese and English supertitles
Libretto by Henri Meilhac and Ludovic Halévy, Adapted from the novel by Prosper Mérimée
Music by GEORGES BIZET
Performance Schedule
Thu,20Feb,2025 17:00 Open/18:00 Star
Conductor: Nodoka OKISAWA
Stage Director & Costume Designer: Irina BROOK
Set Designer: Leslie TRAVERS
Lighting Designer: Takashi KITAMURA
Choreographer: Martin BUCZKO
Costume Associate: Sonoko TAKEDA
Chorus Master: Tetsuya KAWAHARA
Assistant Stage Director: Miroku
Stage Manager: Kensuke MURATA
Technical Directors: Kumi ODAIRA, Kensuke MURATA
Production Director: Kazuko NAGAI
Associate Production Director: Tetsuya ONO
Carmen: Nozomi KATO
Don José: Hironori JO
Escamillo: Shunsuke IMAI
Micaëla: Ena MIYACHI
Zuniga: Hao ZHONG
Moralès: Taiki MUROOKA
Le Dancaïro: Tatsuhiko KITAGAWA
Remendado: Masato TAKADA
Frasquita: Sayaka MITSUI
Mercédès:Yuki SUGIYAMA
Chorus: Nikikai Chorus Group
Children Chorus: NHK Tokyo children chorus
Orchestra: Yomiuri Nippon Symphony Orchestra