昨秋、自主参加した「DXの組織的影響」について考える勉強会で参考図書指定されていた書籍をやっと読了。大学の先生の指導の下、アカデミックと実務の両面からのアプローチを取った勉強会での参考図書らしく、網羅的で地に足に着いた記述で、プラットフォームビジネス(以下、PFビジネス)について一から学ぶのに良書である。
PFビジネスの特徴(特にネットワーク効果)、PFの設計の仕方、市場への導入・収益化の戦略、運営上の留意点、競争戦略、規制対応など、このビジネスを考えるために必要なフレームワークや要素をほぼ網羅して解説している。
記載も非常に客観的。ウーバーやエアビーアンドビーなどの例を多用しながら、従来型のビジネス(パイプライン型と呼んでいる)との違いなども含めての説明は納得感高い。
ただ、PFビジネスそのものはもう新しいものではないので、当時(翻訳は2018年、原著は2016年)に比べると既に一般化している知識も多い。しかもトータルで500ページにもなる厚い本なので読み通すには根気も必要だ。(正直、PFビジネスについて同様のことをもっと簡単に解説した書籍は、その後いくつも出ている)
それでもプラットフォームビジネスについて、研究・実務に関わらず、真正面から取り組みたい人にはその考え方のプロセスを学ぶ上でも、本書にじっくり向きあうのはとっても有益だと感じた。
(個人的に印象に残った記述等はまた別途)
目次
はじめに ── なぜ、プラットフォームは、既存のビジネスを打ち負かすことができるのか
CHAPTER1 プラットフォーム・ビジネスの現在
プラットフォーム革命にようこそ/プラットフォーム革命と変化のパターン/プラットフォーム革命にどう対応するか
CHAPTER2 ネットワーク効果 プラットフォームはなぜ強いのか
低すぎたウーバーの価値/需要サイドの規模の経済/ツーサイド・ネットワーク効果/ネットワーク効果と成長促進策/ネットワーク効果を拡張する ── 参加しやすさと拡張可能性を高めるツール群/負のネットワーク効果 ── その原因と対策/4種類のネットワーク効果/構造変化 ── ネットワーク効果は企業活動を正反対に変える
CHAPTER3 アーキテクチャ 成功するプラットフォームの設計原則
どこから設計を始めるか/コア・インタラクション ── プラットフォームの設計目的/3ステップの設計方法 ── 誘引、促進、マッチング/重層的なインタラクションの拡張/エンド・ツー・エンド原則の適用/モジュール方式の力/プラットフォームの再設計/反復的な改善
CHAPTER4 プラットフォームによる破壊 転換を迫られるオールド・ビジネス
圧倒的産業変革力の源泉/デジタルによる破壊の歴史/劣勢に立たされるパイプライン/価値創造、価値消費、品質管理への影響/ビジネス全体への構造的な影響/既存企業の反撃 ── プラットフォーム化するパイプライン/破壊の主因は技術ではない
CHAPTER5 市場導入 8つの立ち上げ戦略
ペイパル創業者たちの初期の挫折/プル型マーケティング ── バイラリティの拡大/既存企業の優位性 ── 現実か幻想か/多種多様なプラットフォームの立ち上げ方/ニワトリと卵のジレンマを打破する8つの戦略/ユーザー・ツー・ユーザーの立ち上げメカニズム
CHAPTER6 収益化 価値を求めてネットワーク効果を強化する
あるプラットフォーム起業家の収益化計画/価値の発見 ── 数字だけでは不十分/収益化策① 取引手数料を取る/収益化策② アクセスに課金する/収益化策③ アクセス強化策に課金する/収益化策④ キュレーション強化策に課金する/課金対象を誰にすべきか/無料から有料への移行
CHAPTER7 オープン性 プラットフォームの利用範囲を規定する
ウィキペディアのトラブル/オープン化とクローズド化の綱渡り/エコシステムとオープン性の種類/管理者とスポンサーの参加形態/開発者を参加させる/何をオープンにし、何を所有すべきか/ユーザーの参加を促す/オープン性のレベルで差別化/段階的なオープン化 ── メリットとリスク
CHAPTER8 ガバナンス 価値向上と成長強化のための方針
コミュニティを怒らせたキューリグ/国家としてのプラットフォーム/市場の失敗とその原因/ガバナンスの4つのツール ── 法律、規範、アーキテクチャ、市場/賢い自己ガバナンス原則
CHAPTER9 評価指標 プラットフォームが問題にすべきこと
過去のリーダーはどんな評価指標を用いたか/新しい評価上の課題/ライフサイクルと指標の設計/ステージ① 立ち上げ段階の指標/ステージ② 成長期の指標/ステージ③ 成熟段階の指標/スマートな指標の設計
CHAPTER 10 戦略 プラットフォームによる競争の変化
アリババが示したプラットフォームの世界の競争/20世紀の戦略 ── 歴史のおさらい/3次元チェス ── 競争の複雑化/競争戦略① アクセス制限でマルチホーミングを防ぐ/競争戦略② イノベーションを促進し、その価値を獲得する/競争戦略③ データの価値を活用する/競争戦略④ M&Aの再定義/競争戦略⑤ プラットフォームの封じ込め/競争戦略⑥ プラットフォーム設計の向上/勝者独り勝ち市場の持続的優位性
CHAPTER 11 政策 プラットフォームに対する規制
ニューヨーク市にとってエアビーアンドビーは恵みか/規制をめぐる課題 ── 古いルールの改定/プラットフォーム革命の負の側面/規制に対抗する方法/プラットフォームの成長に伴う規制問題/規制2.0時代が到来?/規制当局へのアドバイス
CHAPTER 12 プラットフォーム革命の未来
プラットフォーム革命にどう備えるか/教育 ── 世界の教室としてのプラットフォーム/ヘルスケア ── 扱いにくいシステムのパーツをつなぐ/エネルギー ── スマートグリッドから多方向プラットフォームまで/ファイナンス ── お金のデジタル化/物流と輸送/人材紹介サービス ── 仕事の特性を再定義する/政府機能のプラットフォーム化/IoTのインパクト/挑戦的な未来
解説 ── 妹尾堅一郎(産学連携推進機構 理事長)
用語解説
原注
索引