40年ぶりの老神温泉はほとんど初めての訪問地と同じでまったくのストレンジャーだった。泊った山楽荘の位置関係もまったく分からずフロントでもらった老神温泉の地図だけをたよりに歩いてみた。
老神温泉随一の朝日ホテルはバブル期 の象徴で、巨大化した施設の電気系統が一元管理されているため部分的開業もできず、買収企業も2転3転し再建できなかったという。その為温泉地の真ん中で巨大な廃墟と化している。当時の大規模一流旅館は大同小異の寂れぶりだ。
対岸から見た朝日ホテル。遠目にはハッキリしませんが近くからは完全な廃墟です。
対照的だったのは片品川の大渓谷だ。渓谷はあくまで深く、切り立った岸壁の下を流れる急流はあくまで澄んで岩を食み白い飛沫を挙げていた。前夜に降った雨が残った紅葉を洗い、木の枝に水滴となって残り、素晴らしい景観にうるおいを添えていた。人の世の変転と自然の悠久さを同時体験したこの日の朝だった。