梓澤要
『荒仏師 運慶』★★★
宇江佐さんが受賞した中山義秀文学賞
こちらは第23回受賞作
賞つながりで検索してたどり着いた一作
---
わたしは美しいものが好きだ。
たとえば、女のなめらかな肌、若い男のこりこりと硬そうな筋肉、 春日野を駆ける鹿たちのしなやかな動き、絹布の襞の重なり、複雑で繊細な模様、仏の像の端正なお顔、冠の透かし彫り、夜光貝の象嵌細、水面にきらめき躍る光の渦、風にしなる木々の影。
美しいものを見ると、この手で触れると、恍惚として、自分の醜さを忘れられる。
---
始まりの一文からどんどん惹き込まれ、流れに乗る。
しかし読破するのに半年・・
読みやすいのに苦労したのは、時代背景からかもしれない。
運慶の生まれついた時代は鎌倉時代
源頼朝、北条政子などが登場する。
私的に源頼朝で思い出すのが司馬遼太郎
鎌倉時代にイマイチ乗れなくて、度々手放してしまった。
トータルで思うに王道な時代小説と言える。
読んでいてい気持ちがざわつくことなく安定した物語
参考
運慶の仏像~夏の終わりに~
静と動 静謐な思索といきいきとした躍動 謹厳と寛容
それぞれの像が尊格の特徴を主張しながらも、一つの世界を造り上げている。
それぞれの像が尊格の特徴を主張しながらも、一つの世界を造り上げている。
---
腕が上がればうぬぼれが生じる。才能があればなおさらだ。仏師は自我などというものは捨てねばならぬ。自我を捨てたところに初めて、真の自我、自分らしさが生まれる。父はその、仏師としていちばん大事なことを教えてくれたのだ。
---