塵ひとつないくらいに掃除が行き届いた室内は、天井も壁も、そしてフローリングの床もクリーム色で統一され、広大な砂漠にでもいるような、奇妙な遠近感の錯覚を生じさせた。
20畳のワンルームは、壁面の収納スペースに衣類や本や雑多な小物を放り込んでしまうと、主だった家具を配置しても閑散としていた。バスルームは、到底そこで人が死んだとは思えないくらい、ピカピカに磨き込まれていた。
東向きの大きな窓は、飛び降り防止のためだろうか、ストッパーが付いていて、内側のほうに20センチ程しか開かないような作りになっていた。窓の外にはベランダもない。
カーテンレールに買ってきたカーテンを取り付ける。だいたいの見当で買ったのに、長さとかドレープの出具合いとか、光の透け具合いが思惑通りだった。
窓からは、ビジネス街のシンボル的存在の、超高層の双子のインテリジェント・ビル、通称ツインタワーが見える。その下にはジオラマのような都会の雑踏が広がっていた。
慎二が引っ越して来たその日、ちょうど隣の住人が引っ越して行くところだった。
「余計なお世話だけど、おたく、事情わかってその部屋借りたの?」
ロングヘアを茶色に染め水商売然とした隣の女は、メンソール・タバコをせわしなく吹かしながら、無遠慮に聞いてきた。
「前の住人が風呂場で自殺したんでしょう」
「それ知ってて借りたの?」
「そういうこと気にしないタチだし、それに家賃も安かったし…」
「変わってるわね。でも、わたしはダメ。夜中にどこかで物音がすると、隣の部屋からじゃないかって、気になって眠れないの」
「そう…」
「あっ、ごめん。知らない人にあれこれ言って、ほんと余計なお世話だよね。そうだ、お世話ついでに、わたしこの近くのお店に勤めているの。よかったらそのうちおいでよ」
女は、タバコケースの中から名刺を取り出して慎二に手渡すと、開け放したドアから自室へ戻って行った。
20畳のワンルームは、壁面の収納スペースに衣類や本や雑多な小物を放り込んでしまうと、主だった家具を配置しても閑散としていた。バスルームは、到底そこで人が死んだとは思えないくらい、ピカピカに磨き込まれていた。
東向きの大きな窓は、飛び降り防止のためだろうか、ストッパーが付いていて、内側のほうに20センチ程しか開かないような作りになっていた。窓の外にはベランダもない。
カーテンレールに買ってきたカーテンを取り付ける。だいたいの見当で買ったのに、長さとかドレープの出具合いとか、光の透け具合いが思惑通りだった。
窓からは、ビジネス街のシンボル的存在の、超高層の双子のインテリジェント・ビル、通称ツインタワーが見える。その下にはジオラマのような都会の雑踏が広がっていた。
慎二が引っ越して来たその日、ちょうど隣の住人が引っ越して行くところだった。
「余計なお世話だけど、おたく、事情わかってその部屋借りたの?」
ロングヘアを茶色に染め水商売然とした隣の女は、メンソール・タバコをせわしなく吹かしながら、無遠慮に聞いてきた。
「前の住人が風呂場で自殺したんでしょう」
「それ知ってて借りたの?」
「そういうこと気にしないタチだし、それに家賃も安かったし…」
「変わってるわね。でも、わたしはダメ。夜中にどこかで物音がすると、隣の部屋からじゃないかって、気になって眠れないの」
「そう…」
「あっ、ごめん。知らない人にあれこれ言って、ほんと余計なお世話だよね。そうだ、お世話ついでに、わたしこの近くのお店に勤めているの。よかったらそのうちおいでよ」
女は、タバコケースの中から名刺を取り出して慎二に手渡すと、開け放したドアから自室へ戻って行った。