★★たそがれジョージの些事彩彩★★

時の過ぎゆくままに忘れ去られていく日々の些事を、気の向くままに記しています。

クリムゾン・レーキ 3

2009年10月14日 11時04分10秒 | 小説「クリムゾン・レーキ」
         ◆

「変形性股関節症ですね。それもかなり深刻ですよ。ほら、これ見て…」
 医者は慎二に、レントゲン写真をボールペンで示しながら続けた。
「ここの大腿骨骨頭がね、普通は滑らかな球形なんだけど、あなたのは上の面がこんなにギザギザでしょう。これじゃあ神経を刺激して、まともに歩けるはずがない」
 以前から左の股関節に違和感があり、一年程前からは、長い距離を歩いたり、列車の座席に長時間座ったりすると、鈍痛を覚えるようになっていた。最近では階段の昇り降りの際に、激痛が走ることがたびたびあった。
「治るんでしょうか?」
「治りませんよ、手術しないことには」
「じゃあ手術して下さい」

 そういうわけで、慎二は股関節の手術をすることになったのだが、ベッドが満床で、空きが出るまで自宅待機となった。
 その日は痛み止めの注射を打ち、股関節体操のパンフレットと、飲み薬や湿布薬を小脇に抱えるくらいもらって病院を出た。
 パンフレットや薬は、駅のゴミ箱に捨てた。
コメント
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