大学に入学した当時にヒットしていたガロの「学生街の喫茶店」。
今や1970年代に学生生活を送った世代には、「なごり雪」、「いちご白書をもう一度」と並ぶ、永遠の青春フォーク歌謡だ。
昔から大学の周りには喫茶店が付きものだったが、それをテーマにした曲はありそうで、なかった。
当たり前すぎて、作詞家も見逃していたのだろう。
目をつけた山上路夫さん、あんたは偉かった。
京都で大学生活を送った私にも、私の「学生街の喫茶店」があった。
「スペース」という名のその店は、喫茶店にしては珍しく、住宅の2階にあり、漫画や週刊誌の蔵書が豊富で、2、3人のウエイトレスは日替わりのバイトだった。安くて美味しいクジラカツのランチが名物だった。
大学の校門前にあったその店は、所属していたフォークソング同好会の溜り場で、いつ行っても誰かしら知った顔がいた。
九州の田舎から出てきて、右も左もわからなかった私にとって、この喫茶店は、同好会の先輩や同輩たちとの音楽談義だけでなく、学生生活のあれやこれやを教えられた思い出の場所だ。
特に同好会やクラスメートの女の子連中を交えて、いろんな話をするのは、これぞ大学生活、これぞ青春、の思いだった。
ひとつ残念なのは、店内に流れる音楽がスタンダード・ジャズやイージー・リスニング系の曲で、ボブ・ディランが流れることはなかったことだ。