かっこうのつれづれ

麗夢同盟橿原支部の日記。日々の雑事や思いを並べる極私的テキスト

早く細胞単位でガンを駆逐する技術が出てきてくれないものでしょうか。

2008-12-09 22:47:49 | Weblog
 最近外を出回ることが多かったせいか、今日一日職場の事務所にいたのが実に久々な気がいたしました。私は別に営業じゃなし、外で歩くのが主任務なはずは無いのですが、何かと色々都合が重なり合って、そろそろ三分の1を過ぎようかという師走の今月、まだわずか2日しかまともに出勤していないのです。おかしな星の巡り合わせとしか言いようがありませんが、個人的にはもう少し落ち着いて腰をすえて仕事をしたいと思うこのごろです。

 さて、最近は色々面白い研究事例がニュースになっていて、見ていて楽しいものです。昨日のものですが、たまたまそれが載っている新聞を見たのが今日だったもので、今日の日記にしたためておきます。
 東大、米国立がん研究所、オリンパスの研究チームが、生きているがん細胞だけに取り込まれて蛍光を発する分子を開発したと発表しました。
 細胞中にリソソームという小さな袋が存在します。この袋にはpH5付近とかで良く働く様々な加水分解酵素が入っていて、たんぱく質の分解や脂質の代謝などに働いている、生命維持に必須の小胞体なのだそうです。ところで細胞ががん化すると「抗体」と呼ばれるたんぱく質が合成され、がん細胞に取り込まれ、がん細胞中のリソソームに入ります。そこでこのガンに特異的な「抗体」と結合して、弱酸性の条件下でのみ緑色の蛍光を発する分子を開発したのだそうです。細胞の他の部分はpH7付近の中性ですから、いくら存在しても蛍光は出ません。一方、ガンに特異的な「抗体」はがん細胞にしか取り込まれませんから、その二つを合体させてがん細胞のみ狙い撃ちできるものを作った、というわけです。しかも、がん細胞が死ぬ時はリソソームも少しずつ内部が漏れたりして酸性から中性に変わりますので、死んだガン細胞は蛍光を発しません。これまでガンの手術などは、がん化した病変部分を含めてどれだけの範囲でガンが浸蝕しているかわからなかったため、安全のために相当広範囲に周囲の健全な部分を一緒に切り取ったりしていましたが、この方法を応用すれば、まさに細胞単位でガンのあるなしを判別し、最小限度の治療で最大の効果が得られるようになるのです。
 そこまでできるなら、弱酸性で細胞毒性を発揮する物質とかアポトーシスを誘発する物質とかを作ってこの抗体に乗っけてやれば、イージスシステムみたいに危険性の高いがん細胞のみを文字通り狙い撃ちして邀撃することも可能になりそうなものです。
 そういえば、昔奥瀬早紀の「火炎魔人」と言う漫画にも、吸血鬼化したDNAを持つ細胞のみを焼き尽くして、人の吸血鬼化を防ぐという技が出てきましたが、ガンに特異的に取り込まれるたんぱく質などの研究も進んでいるそうですから、いずれ遠からぬうちにそんなものも本当に世に出てくることになるのでしょう。

 ガン対策にいろんな技術が開発されてきた経緯は、例えば柳田邦男の「最新医学の現場」や「がん回廊の朝」などで読んだものでしたが、そんな本から四半世紀ばかりが過ぎ、いまやそれが細胞単位で可能になりつつあるという、営々と続けられてきた研究の成果が、明日の我が身を救ってくれるかもしれないと思うと非常な感慨に身が震えます。

コメント
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