かっこうのつれづれ

麗夢同盟橿原支部の日記。日々の雑事や思いを並べる極私的テキスト

体調悪化の暗示をうまく活用できるかどうか。

2009-03-15 20:16:35 | 夢、易占
 「アルケミックドリーム ひまわりの姉妹達」第2章終了です。
 麗夢ワールドを代表するロリロリキャラ2人の出会いから物語が動き始めるわけですが、最初はこの公園での出会いは想定しておりませんでした。シェリーちゃんの迷子や、緑に惹かれて「お姉さま(笑)」と出会うまでは初期設定どおりなのですが、出会いの場所は違うシチュエーションだったのです。当初、ここまで考えて、はたとこの後の展開に迷いが生じました。この二人の出会いから何を求めるのか、どう話を動かし、世界をつむぎだしていくのか、どうにも具体的に思い浮かばなかったのです。しばらくこのシーンまでで話が進まなくなった時の苦しさを今でも覚えていますが、このまま強引に進めていっても絶対途中で破綻する、と見えているのに、どうしたらよいかわからない、というのは、作品にとっては致命的なものになります。下手をするとお話ひとつ丸々やり損なうわけで、夏コミ当選後に書き始めてタイムリミットが迫る中、さすがに私も焦りに焦りまくりました。結局しばらくして、このお話のテーマになる根幹部分をこの当初考えていた出会いのシーンを舞台として思いつくことに成功し、書きかけの第2章を大幅に改編、以後、ノンストップで1ヶ月とかからず一冊の小説に仕立て上げたのでした。
 まさに生みの苦しみを味わった第2章。思い出してみると、なんとも感慨深いワンシーンでもありました。
 ちなみに、この話の中の「ローマの休日」云々のやり取りは、その後2006年に麗夢記念合同誌を製作したときに、麗夢新作を作るとすれば、という企画でまんま取り込んでおります。こちらも、機会があればちゃんとしたお話にしたいですね。
 
 さて、実は今朝の夢で、またクモが出てきました。昔住んでいた家の寝室で目覚めると、真上の天井から下がる電灯から直径60センチくらいのクモの巣が垂直に広がっており、網の中央に小ぶりなクモが揺れていて、危うく頭に引っかかりそうになりました。隣の部屋にもクモの巣があって、こちらは手のひらよりやや小さいくらいの大きめなクモがおり、それが家人の胸に飛びつく、というところで目が覚めました。クモの夢は、これまでも体調不良を暗示する一種の予知夢として記憶されていますので、数日のうちにまた熱を出したりすることになるのかもしれません。今週は水曜日から泊りがけで遠出する仕事がありますので、ここで倒れるわけにはいきません。これまではあまり役に立てられなかった夢ですが、今回は少し慎重に状況を観察し、食事や睡眠、それに薬も使って、できることなら体調の悪化を最小限に食い止めたいと思います。

 
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02.出会い その4

2009-03-15 11:38:09 | 麗夢小説『向日葵の姉妹達』
「あなた、この辺の人じゃないわね。どこから来たの?」
「あ、あたし、フランケンシュタイン公国から……」
 私はまだ驚きからさめやらぬまま、真正直に答えた。
「フランケンシュタイン公国? へえ、随分遠くから来たのね」
「ご存じなんですか?」
「ええ、確かジクムント・フロイトが晩年に住んだ国でしょ?」
 私はまたも正直に驚いた。
 博士や鬼童さんによると、日本人で私の国を知っている人はほとんどいないそうだ。そして確かに、工場の社長さんや従業員の人達も、博士や私の自己紹介に、「日本語上手」とほめるばかりで、私の国のことを話しても首を傾げるだけだった。
 ところが、この人はズバリ知っている。
 それだけで、私はマリア様かイエス様にあったような気分になったのだから、余程不安が高じていたのだろう。どうぞ坐って、と少し腰をずらしたその人の隣に腰掛けながら、私は声をうわずらせて尋ねてみた。



「あ、あなたは? あなたもこの土地の人とは思えませんけど」
 するとその人は首を傾げ、努めて明るく私に答えた。
「あたし? あたしは大阪の生まれよ。正真正銘の日本人」
 私は今日三度目の驚きに目を丸くした。
「うそ……」
「本当よ」
 でも髪の色も違うし、その格好はきっと工場の社長さんのような日本人の中では、はっきり目立つほどに違うじゃない……。
 そんな私の心の声は、喉が空気を震わせる前に顔に出ていたらしい。少女はまた笑顔を閃かせて、私に言った。
「この髪? もちろん脱色しているのよ。それに肌の色だって」
 なるほど、そう言えば工場の従業員さんにも、黒とはもう言えない薄い色の髪の人がいた。それに彼女の肌の色は、私とは確かに違う。黄色人種に分類される、麗夢さんと同じ暖かみを帯びた色だ。
「それで、フランケンシュタイン公国人のあなたが、こんな異国で何をしているのかしら? ひょっとして、かの国のお姫様?」
「え? い、いえ、違います」
 私は咄嗟にかむりをかぶって、彼女の言葉を否定した。確かに国ではそれなりに重要人物の孫娘だけれど、フリードリッヒ・フランケンシュタインIV世陛下の姫君では断じてない。
 すると彼女は、ちょっとがっかりした風に私に言った。
「そう、私てっきり『ローマの休日』かと思ったのに……」
「……」
 私が返答に困って黙っていると、彼女は改めて何をしていたのか聞いてきた。
「えと、ちょっと迷子になって……」
 自分で口にすると、思わず不安がぶり返してまた涙が浮かんでくる。
 それを知ってか知らずか、彼女は努めて明るく、私に言った。
「ふーん、ところであなた、時間、ある?」
「え? ええ……」
 一体何を聞くのか、と私が目を白黒させていると、その少女はこともなげに驚くことをまた言った。
「じゃあお願いだから付き合ってくれない? 私、是非探したいものがあるの。何となくあなたとなら見つかりそうな気がするのよ」
「探し物?」
「そうよ。お礼にあなたを助けて上げる。ちゃんとはぐれた仲間のところに連れていって上げるわよ。どう?」
「本当に?……」
「もちろん!」
 私は突然のありがたい申し出に、また涙がこぼれそうになった。もしこれが詐欺なら、これほど容易い相手はいなかったに違いない。
 それでも私は、混乱する頭の中でも何となくこの人は信じても大丈夫という気がしていた。
 根拠も何もない。
 後で麗夢さんが知ったら叱られちゃうかもしれないけれど、私は彼女を信じることに、その瞬間決めたのだった。
 私が黙ってこっくり頷くと、彼女は早速私の手を取った。
「それじゃ行きましょ。まずは腹ごなしね。あなた、タコは食べられる?」
「タコ? ええ、食べられますけど……」
「良かった。欧米人って、タコ苦手な人多いでしょ? でも、この町で一番美味しいのはタコなのよねぇ」
 彼女は独り納得の頷きを何度か繰り返すと、突然また振り向いて私に言った。
「ところであなた名前は?」
「し、シェリー、です」
「シェリーちゃんね」
「あ、あの、あなたは?」
 私は当然そう聞き返した。第一名前も判らないとこの先呼びかけるのも苦労する。ところが、彼女は小首を傾げると、軽く眉を寄せて今日一番の驚く答えを私に返した。
「私? えーとね、実は……」
「実は?」
「判らないの」
「え? えーっ?!」
 私は相手の言葉の意味を理解するや、ただ絶句するしかなかった。そんな私の前で、彼女はのんびり私に言った。
「ええ。さっきから思い出そうと頑張っているんだけど、これが駄目なのよねぇ。これも、探し物の一つだわ」
「そんな……」
 自分の名前まで探し物の一つだなんて……。
 じゃあ彼女の他の探し物って一体? 
 新たな不安をかき立てられながらも、私は努めて冷静に尋ねた。
「じゃあ、あなたをなんとお呼びしたら……」
「私? そうねぇ……」
 彼女は腕組みしてあらぬ方を睨み付けていたが、やがて楽しそうに笑みを閃かせて、私に言った。
「時に、シェリーちゃんは年は幾つ?」
「え? 11才、です……けど……」
「そう、私は14才だから、私の方が上ね。なら都合がいいわ。いいこと? これから私のことは、お姉さまと呼びなさい」
「お、お姉さま?」
 私はもう驚くのも飽きるほど彼女を見つめていたが、彼女は別に気を悪くするでもなく、私の手を取った。
「え? あ、ま、待って……」
「お姉さま、でしょ?」
 彼女は振り返ると少し口を尖らせて私に言った。
 その様子が、年上なんだけど思い切り可愛らしく見えて、私も思わず微笑んでいた。
「待ってください、あ、あの、お、おお、お姉さま!」
 それを口にするのは妙に気恥ずかしくて、初めての言葉はどもってしまった。
 日陰だというのに耳も熱い。
 でも彼女、いいえ、お姉さまは、充分うれしそうに頷いた。
「うん! 上出来ね! さあ行くわよシェリーちゃん!」
「どこへ行くんですお姉さま!」
「さっき言ったでしょ? まずは腹ごしらえ。次に私の探し物よ!」
 疑問は一向に晴れないまま、私の体と心は、たった今出来た「お姉さま」によって、ぐいぐい引っ張られていった。
 私はやっぱり戸惑ったままだったけど、少なくとも不安だけは、無くなったみたいだった。
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