かっこうのつれづれ

麗夢同盟橿原支部の日記。日々の雑事や思いを並べる極私的テキスト

映画「ジェネラル・ルージュの凱旋」 結構面白いですね。

2009-03-26 23:48:58 | Weblog
 「ジェネラル・ルージュの凱旋」(公式サイト:http://general-rouge.jp/index.html)を観てきました。前作の「チーム・バチスタの栄光」の評判が芳しくない様子だったため、今回もまるで期待してなかったのですが、ネットでつらつら眺めていると案外に評判がいいこと、今日木曜日は、我が田舎町のシネコンで男性一人千円のサービス価格で鑑賞できる日で、かつ年度末進行も一段落して時間ができたこともあって、早めに仕事を片付け、帰りがけに映画館に立ち寄ったのでした。
 で、その感想はというと、十分千円分の元は取った気になるくらい、結構面白く観る事ができました。もちろん原作とは似ても似つかぬほどに変容した主人公達=田口公平から田口公子へと女性化させられた「愚痴外来」行灯先生田口公子や、外観はまったくだらしないロジカルモンスターのはずが、まるで見当違いな事ばかりしゃべるオチャラケキャラになっていた白鳥圭輔、リスクマネジメント委員会とエシックス・コミティに峻厳と分かたれていたはずの組織がごっちゃにされた倫理委員会、相手役速水救急医療センター長の収賄相手企業メディカルアソシエイツがメディカルアーツになり、果てはその営業マンが謎の自殺(?)で事件に色を添えてみたり、と、原作ファンとしては違和感ありまくりでしたし、特に序盤のヒロイン田口先生がおろおろしっぱなしの様子は、全く見るにたえないものがありました。ただ、ここで頭を切り替えてとりあえずは原作を忘れ、この映画は原作の根幹だけを換骨奪胎して全く違う話に仕立て上げた別物、として意識してみれば、結構すんなり抵抗無く物語を楽しめるようになりました。
 速水晃一役の堺雅人や敵役沼田利博こと高嶋政伸のはまりぶりは堂に入ったものでしたし、田口先生の相棒藤原真琴を演じた野際陽子も、なるほど、藤原看護師とはこういうヒトだったか、としっくりと頭に入ってきました。お話も、現場が崩壊寸前の救急医療制度問題、というテーマに集中し、クライマックスに配置された大惨事における医療スタッフの活躍と苦悩がダイナミックに描かれて、実によかったと思います。

 もちろん、やはり原作ファンとしては気になるところは多々あります。
 ジェネラルの異名を取るにいたった城東デパート火災事故での速見の活躍が、結局最終的には失敗に終わった、とされたこと。
 映画と同じくクライマックス直前に配置されたリスクマネジメント委員会の席において、ウィーンから帰国したばかりの黒崎教授が、散々速水をこき下ろしておもねる沼田の言葉の後で、職業人として最高の判断を下したシーン。まさに仕事をする人間はこうあるべき、といたく感動した私の一番好きな場面なのですが、映画ではすっぱりやられ、黒崎教授はただの高慢ちきなピエロに貶められたこと。
 それに、私的にはこの作品で一番のヒロインだと感じていた猫田師長が、映画では完全に切り捨てられていたこと。主人公の女性化も含めて他の諸点は受け入れられても、この3点だけは大変残念に思った次第です。特にお話的にも、城東デパート火災の際の神がかった速水の活躍は、そのままに描くべきではなかったでしょうか? それあればこそジェネラル・ルージュは伝説となり、その後の病院における速水の驚異的なスピードでの地位確立に大きく影響したと思われるのに、あそこで結局受け入れ拒否せざるを得なかった、となっては、勝手な判断をした若造速水の経歴に傷がつき、その後あの年齢で救急救命センター長に任命されるような出世は、大学という組織ではまずありえないでしょう。製作陣は、速水がそのときの忸怩たる思いを忘れずにいた、という方が一般には理解しやすいと判断したのでしょうが、私には明らかに違和感を覚えるストーリー改変でした。
 まあラストでドクターヘリが飛ぶ甘々な展開にも苦笑させられましたし、他にも色々いいたいこともありますけど、最初にも書いたとおり映画としては十分に面白いものであったことには違いなく、見ていないヒトには十分お勧めできる作品だと思います。その上で映画を観られた方には、ぜひ原作の小説も紐解いて欲しいです。映画では描ききれていない魅力的な人物達の大活躍が、これでもかとばかりに詰め込まれていますから。

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