かっこうのつれづれ

麗夢同盟橿原支部の日記。日々の雑事や思いを並べる極私的テキスト

「新作」も早いとこ設計図作らないといけませんね。

2009-05-31 21:24:57 | Weblog
 まあ毎度のことですが5月も今日で終わり、明日からは夏を意識させられる6月の始まり、とあって、さすがに少々焦りを覚えつつあります。まあ5月は引越しでほとんど時間を費やすことになった、ということはあります。そして片付けはまだまだ終わらず、今日も一日運び込んだ荷物の整理でばたばたしておりました。とは言え、いつまでも引越しのばたばたに翻弄されるのも難儀なことですし、いい加減そろそろ自分のペースを取り戻すようにしていきたいところです。6月はそんな期間になればよいな、と願っております。

 さて、連載小説のほうはようやくペースが復調しました。次からは、ドリームハンターにふさわしい新しい展開に入ります。クライマックスに向けての助走がぼちぼち始まるところ、といった話で、ここから徐々に話の展開スピードも上げて行く事になります。
 この作品は、今にして思うと、そういった話の展開の速度を最初からかなり計算ずくで意識した最初の作品だったといえそうです。もちろんそれまで書いたお話もそれなりにクライマックスシーンまでの展開には気を配って来たつもりですが、最後の方になるまで一体このお話が何字の原稿になるのか、まるで見当もつきませんでしたし、一つ一つの章立ても割りと行き当たりばったりに並べて、後で前後を入れ替えたり丸々削除して別の話を入れたり、なんていうような試行錯誤を結構しておりました。このお話も、当初はそんな手探り状態ではじめたのですが、メインテーマをはっきりと意識した段階で、映画のシナリオのように上映時間ならぬページ数を意識して全体の展開を根本から練り直し、ちょっとした設計図を作って起承転結を定め、話の流れを明確にしてから書き始めました。これだけの長さのお話を、私のお話の中では最短の時間で上梓し、夏コミに間に合わせられたのも、そんな最初の準備が幸を奏したのだろうと思っています。
 そんなことを思い出しつつ、今手がけつつある新しいお話も、そんな風に作れないものか、と考えています。思ったように時間がとれず、なかなか進められないところが辛いのですが。

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07 復活計画 その4

2009-05-31 11:03:16 | 麗夢小説『向日葵の姉妹達』
 真野昇造は、少しうつむいて目尻をもむように右手を上げた。多分、気を落ち着かせているのだろう。それは、真野にとっては救いがたい程積み重ねてきた失敗の歴史に違いないのだ。
 やがて真野は再び顔を上げた。
「ヒトはやはり必要な時間をかけ、必要な経験を積み重ねんと、ヒトになることはでけん。そやけど、儂の寿命はもう必要な時間をとれるほど残っとりはしません。この袋小路を破らんことには、どないしようも無かったんです。まさにそこは神の領域と言ってもええですやろ」
 さもあろうと麗夢も思った。肉体は、考えたくもないがヴィクターを初めとする研究者の手によっていくらでも成長を早め、クローンにすることもできるのだろう。だが、心はそう簡単ではないはずだ。プラモデルを組むように心を構築できるなら、誰も悩み、苦しみ、嘆く事もないのである。だが、と真野昇造は語を継いだ。
「一年前の事です。儂の研究所のメインコンピューターに、突然どこからか大量のデータが送りつけられてきよったんですわ。それが何か判ります? 麗夢さん?」
 一年前?
 目の前の佐緒里を目にしては、いやでも思い出すしかない事が一つあった。
 グリフィンの暴走。
 その時、グリフィン上で動いていた一つのプログラムが、設計者の意志を誤解し、究極の存在になるために東京を文字通り死の都にしようとしたのだ。
 曇った麗夢の顔色に、真野は微笑んだ。
「きっと麗夢さんの思てる通りや。そのプログラムは、ROMと名付けられた一連の統合プログラムやったんですわ。その一部を走らせてみた儂は、現れた姿に驚愕しました。まるで佐緒里に生き写しやないですか。もちろん癖のある金髪とか違うところもありましたが、それでも儂の目ぇには佐緒里がおるとしか見えませんでした。儂は大急ぎで他のプログラムも調べてみて、更に驚きを新たにしました。何言うたかて、完璧な人間の女の子が、そこにシュミレートされてたんやから。儂は取り憑かれたようにそのデータの解析にのめり込みました。そしてそれが、生きてる人間と同じく、自ら思考し、創造する能力を持ってる、奇跡のプログラムやと知ったんですわ」
 確かに表面上、ロムは見事に人格を持った一人の女子中学生だった。それは直接対峙した麗夢自身が感じたことだ。だが、彼女には致命的な欠陥があった。だからこそ麗夢は、彼女をその母体、グリフィンごと滅ぼさねばならなかったのである。
「誰がどんな技でこんな奇跡を生み出したのかは判りません。儂のコンピューターに流れ込んできた理由も知りませんわ。そやけど、儂はこれを天啓やと思た。これまで失敗続きやった儂の計画に、神さんが遂に味方してくれたんやと思ったんです。つまり、このプログラムを佐緒里の大脳に定着させたったら、心を持った人間として佐緒里を甦らせることが出来るんちゃうか。儂はこれが最後の挑戦と思うて、早速これまでさしたる効果を上げてこんかった大脳腑活化装置を改造し、ちょうど培養を完了した二人の佐緒里に、このプログラムを与えてみましたのや。その一人が、この子なんです」
 麗夢は改めて真野昇造の隣に立つ少女に目をやった。今となっては理由は判らないが、真野佐緒里と屋代修一がプログラムしたROMは、姿形も移植されたとしか思えないほどそっくりだったわけである。だが、心を移植した(!)と真野氏は言うが、本当にそんなことがあり得るのだろうか。こうしてみる限り、目の前の佐緒里嬢には、あの天真爛漫なロムの姿は微塵も伺うことが出来ない。まるで心など無いかのように、静かに、そして無表情に麗夢を見つめ返しているばかりである。
 麗夢は視線を真野昇造に戻して、気になっていた疑問を口にした。
「で、もう一人はどうされたんです?」
 実は麗夢には予感があった。第一ヴィクターの落ち着きぶりが気に入らないのだ。案の定、真野氏は答えた。
「ええ、実はちょっと目ぇ離した隙に逃げ出してしまいよりましてな。その足取りを追いかける途中で、貴女達と会い、矢も楯もたまらず、ここへお連れしてしもうた訳で」
「何故私達が?」
「ヴィクター博士が、人造人間の人間性を調べるんに、ある少女の力を借りたという話を小耳に挟みましたんや。それを教えてもらいたかったんです。つまり貴女のことや。麗夢さん」
「じゃあシェリーちゃんを連れ去ったのは……」
「お察しの通り、もう一人の佐緒里さんだ」
 ヴィクターの言葉に、ああやっぱり! と麗夢は大きく溜息をついた。でも、それが判ったからと言ってシェリーの安全が担保されたわけではない。麗夢は久々に怒りが沸騰するのを覚え、語気鋭くヴィクターに突っかかった。
「それで今どこにいるの!」
 すると、ヴィクターを抑えて真野昇造が答えた。
「実はお昼過ぎに加太の海水浴場で儂の部下が接触に成功したんやけど、突如乱入した一人のぼんさんのために取り逃がしてしもうたんです」
「そのお坊さんって、まさか……」
「報告やと円光いう名前らしい。儂の部下五人を、まるで草撫でるみたいに瞬く間にのしてしもうたそうや」
 自分の部下をやられたのに、何故か楽しげな真野氏の後を継いで、ヴィクターが言った。
「何故円光氏がそこに居合わせたか僕にも判らない。でもドラコニアンを杖一本で止めたほどの脅威の男が二人には付いているんだ。今は安心して、真野昇造氏に協力して欲しい」
「何をするのよ?」
「この子の夢に入ってくれませんか。ジュリアンの時のように……」
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