かっこうのつれづれ

麗夢同盟橿原支部の日記。日々の雑事や思いを並べる極私的テキスト

実家の父がすっかり機械音痴になっているのを見て、自分の30年後を想像してしまいました。

2009-10-18 22:41:04 | Weblog
 今日は所用で枚方の実家に帰りました。父が携帯を新しくしたのですが、どうも使い方が判らずに難儀していたので、それを何とかするために出向いたのです。結局、設定が簡単モードになっていて、直したい部分が省略されていたので、とりあえず簡単設定を解除し、いくつか設定を直して、元の簡単モードに戻して、解決、とは相成りました。父はもともと東大阪至近の町工場で長年旋盤一筋に鍛え上げてきた技術者で、新しいものに目が無く、安月給にもかかわらず、テレビなども近所で一番最初に買ってきたりというような性格を持った御仁ですが、その父にしても、最近のテレビやビデオ、携帯やデジカメなどの操作には戸惑うことの方が多いようで、うまく思うように動かなくなったり異常をきたした時は、私が出張ってそれを修復したり操作を教えたりするようになっています。もちろん私もさわったことも無い携帯の操作などわかるわけも無いのですが、マニュアルを見て当該の機能を探してその通りに操作するくらいは出来ますので、何とか父の要望をこなすことが出来ています。つまり父もマニュアルを読めば何とかなるとは思うのですが、今の携帯のマニュアルは分厚くて字も小さくて必要な機能を探し出すにもいまいち使いにくいところがあり、このままこれを、父に読め、というのはかなり無理なところがあります。携帯の機能がそれだけ増えてしまったのだからしょうがないところもあるのでしょうが、父のようなかつての技術者すら戸惑わせるような代物は、技術者ではない仕事をしてきたヒトなどには、もっとまごつかせる代物になっているのではないでしょうか。それこそもっともっと必要な機能を絞って、お年寄りにも使いやすいものになればよいと思うのです。かつてはそういう方向性の商品もあったように記憶してますが、もう今はそういうのは出ていないのでしょうか。
 一方、私は現時点でPCもデジカメも携帯もそれなりに使うことが出来ており、その操作に戸惑う、ということはあまりありません。父が旋盤に対して理解していたほどにそれら機器類を理解し、使いこなしているかというと少々心もとないですが、まあ無難に使うくらいのことは出来ていると思っています。そんな私は、たとえば30年後の、現在のデジタル機器類の進化形を手にしたときに、今の父が携帯などに感じている戸惑いと同じ状況に陥るのか、はたまたそれなりに使いこなすことが出来るのか、少し考えさせられるものがあります。現に今でも、たとえばネットで、私はブログやメールはそれなりに使いこなし、ホームページも一応は作ることが出来ますが、一方でSNSとかRSSとかTwitterとかはほとんど利用出来ていませんし、その価値や存在意義なども理解もできていません。そういう意味では既に周回遅れになりつつあるのかもしれないわけで、それがだんだん積み重なってくれば、いずれそのうち、ネットとは複雑怪奇な代物なり、と溜息をつく日が来無いとも限らないわけです。といって今更それらを理解しようとか使ってみようとかして、少しでも追いつこうとする意欲は全くもってないのです。私はなるだけ未来の科学技術の進歩を観てみたいと思っておりますが、自分の身近な部分で既についていけなくなっているのだとしたら、そんな未来の科学技術は全く理解の及ばない魔法同然のものになって、観てもしようがないものになっていたりすると哀しいんじゃないか、と想像してしまいました。願わくば未来の技術はもっとお年寄りに優しい形に進化してくれておりますように。

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15 五分間の攻防 その3

2009-10-18 10:00:00 | 麗夢小説『向日葵の姉妹達』
 あと5分!
 榊は、もう何度見たか判らない時計をもう一度見直して、残り時間を確認した。
 拳銃の弾丸は残り五発。
 あわやという場面でひたすら撃ちまくり、何とか無難に弾丸も入れ替えて、ぎりぎりここまで無事に来た。
 あと一分につき一発だけ撃てば、ちょうど足りる計算である。
 だが、はたしてそれで凌ぎ切れるだろうか?
 榊は回りに光る怪物達の目を意識して、少しくじけそうになった。
 やはり公園の中だけでは、逃げるにも限度がある。それでも何とか凌いだ榊の力量は称賛に値したが、その幸運もそろそろ鉱脈が尽きようとしていた。
 それは、突然目の前に割り込む形で訪れた。漆黒のリムジンが、無灯火のまま榊のプジョーの前に躍り出たのだ。こちらも少しでも怪物達の目を逃れるように、無灯火のまま全力疾走している。榊は必死に急ブレーキを踏み、ハンドルを切って衝突を避けた。
 タイヤの悲鳴が夜のしじまを破り、プジョーは辛うじて大破することを免れた。と、榊の後方を塞ぐように、また黒塗りの車が二台止まった。その車から、わらわらと榊を凌ぐような体の大きな男達が現れて、プジョーを取り囲んだ。
(何者だ? 夢魔には見えないが……)
 榊がアイドリング状態で様子をうかがっていると、前に止まった一台の後部ドアが開き、一人の老人が降り立った。真野昇造である。
「榊はん、ご苦労なこっちゃな」
「真野さん、ここは危険だ、早く避難しなさい」
 榊は、夢魔達に何時襲われるかと気が気ではない。だが、真野はそんな恐れは微塵も見せないまま、榊に言った。
「榊はん、儂の孫は死んでしまいましたわ。もう生き返って来ぃしません」
「一言申し上げておくが、麗夢さんのせいじゃない。佐緒里さんが、自ら命を絶ったんです。およそ、我々には信じがたい方法でね」
「そないなことは承知してま。結果は残念やったけど、麗夢はんは充分儂の期待に応えて下さった。感謝してます」
「なら、早く避難なさい! 私と反対方向に行けば助かる確率も上がる」
 榊は懸命に目の前の真野に訴えた。だが、真野は黙って大阪城を振り仰ぐと、榊に言った。
「えらい大きゅうなってしもうたが、あれも儂の孫です。佐緒里なんです。幾ら榊はんでも勝手なことはして欲し無いんですわ」
「勝手なことと言うのは何ですかな?」
 榊は不穏な空気を周りから感じて、緊張を新たに高めた。
「ゆうてますやろ? あれは儂のかけがえのない孫なんです。あんたらどないかしたろ思てはんのやろうけど、そうはいきません。まずはそのお嬢さん方を、こっちに頂きましょうか?」
「真野さん、あなた一体何を考えて……」
「折角生き返った佐緒里を殺そうなんていう奴らは、許せませんのや!」
 真野の叫びを合図に、男達の包囲網が一段と縮まった。もはや無事切り抜ける術はないらしい。榊は覚悟を決めると、アイドリング状態を保ったままプジョーから降りた。
「ずっと逃げ回ってばかりいたんで、ストレスがたまっているんだ。時間も惜しい。悪いが、手加減はせんぞ」
 腕まくりした榊に、取り囲んだ男達は失笑をもらした。
 警察官として多少腕に覚えはあるらしいが、こちらは目の前の男よりはるかに若くて体も大きい。訓練だって充分に積み、戦いには自信もある。昼間は妙な坊主にしてやられたが、この初老のひげ面に負けるなど、一対一でもあり得ない。ましてや今は、こちらは10人もいるのだ。万に一つも負ける事はない。
 少なくともそれから5秒間は、まだ男達はそう信じていた。
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15 五分間の攻防 その2

2009-10-18 09:45:00 | 麗夢小説『向日葵の姉妹達』
 ケンプは、円光を上に貼り付けたまま、城の北側、おもいでの森、と名付けられた木々の連なり目指してドラコニアンIIを走らせていた。同じ頃、ハイネマンは天守閣から見て東北にある野球場へ、モーリッツは南東玉造口の外側にあるにおいの森へ、ヨハンは南西の駐車場へ、シュナイダーは同じく北西の京橋口から外へ出て、距離を取ることになっていた。こうして、ほぼ等距離で五方向から囲い込み、鬼童によって若干の改造を加えられた対精神波防御システムをリンクさせる。それも、隣同士を繋ぐのではなく、ケンプのドラコニアンからは、においの森にいるモーリッツと、南西の駐車場にいるヨハンとに直接リンクすることになっていた。
 お互い両隣をおいてその向こうとリンクしあう形で直線を引くと、ちょうど五芒星の形になる。
 これは、ソロモンの印として世界的に知られ、地のエレメント、繁栄の象徴と崇められる聖なる形だ。また、この日本においても安倍晴明のシンボルとして、「晴明桔梗」の名が付いている不思議な文様である。この形を大阪城天守閣を中心に出来るだけ美しく描き、この五芒星の上に円光の法力を載せようと言うのが、鬼童の作戦だった。
 今、ケンプのドラコニアンIIに搭載されたナビゲーションシステムには、大阪城を中心とした半径一キロの地図が描かれている。その中に巨大な五芒星が白く浮かび、小さな五色の光点が、それぞれの頂点に向けて移動しているのが映っていた。今のところ止まったり後退したりしている様子はどの光点にも見られず、順調に作戦は推移しているように見える。ケンプの車両も、現在その前を遮ろうという化け物の姿は見られなかった。
 榊がうまく立ち回ってくれているらしい。
 ケンプは恐らくもっとも困難な役を引き受けた年少の友人に感謝しつつ、ひたすら北へとひた走った。目標到達まで、後少しである。
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15 五分間の攻防 その1

2009-10-18 09:30:00 | 麗夢小説『向日葵の姉妹達』
 大阪城公園は、天守閣を中心に、総面積106.7ヘクタールを数える広大な敷地を誇る、大阪でも有数の公園である。だがそれも、大阪城の堀で幾つかの区画に分かれており、また1,200本の梅を植えた梅園や、三千人収容の野外音楽堂など、色々な施設が敷地内に散在して、自由に走り回れる空間はそれほど多いわけではない。このまま公園の外に脱出すればまだ行動の自由がきいたかも知れないが、麗夢がシェリーの夢にいる間は、大阪城から離れるわけには行かなかった。物理的に離れすぎると、万一の場合、麗夢の精神が自分の身体に戻ってこられなくなるかも知れない。そう鬼童から脅された榊は、とにかく必死に公園内を逃げ回るより無かったのである。
 運転する車は、持ち主に似合った可愛らしいボディーだが、そのポテンシャルは到底外観からは伺えないハイパワー振りだ。と言って、助手席と後部座席に眠れる美女達を抱えているとあっては、そうそう無茶な運転も出来ず、榊は思わず舌打ちをしながら、必死にプジョーのハンドルにしがみついていた。
(せめて武器が使えたらまだ良かったのだが……)
 普通の車にはない色々な計器やスティック類を見ても、それが扱えるとはとても思えない。一応は操作を手短に聞きはしたが、もともとボタンが3つ以上付いている機械を自在に操作できる程器用ではないのだ。第一搭載された特殊兵器は、その殆どが既に弾切れ状態に近い。つまり、たとえ榊にそれが扱えたとしても、もう役には立たないと同然なのである。
 唯一榊にも扱えそうで、あの化け物どもに効果が期待できそうなのは、麗夢に預けられた拳銃である。
 予備弾倉も三つ別に持たされたが、ハンドルにかじりついたままの現在の状況で、はたして弾の入れ替えなど出来るだろうか。いやそれどころか、撃つことすら怪しいのではないか? 
 こんな状況で頑張るには、ひたすらプジョーを走らせ続けるしかない。
 周囲に血走った視線を送り、不意打ちされることの無いよう気を付けながら、アクセルとブレーキを次々と踏み代える。クラッチを頻繁に繋ぎ代え、けして直線で走らないようハンドルを回し続ける。榊は、これまで培った運転技術の全てをこの瞬間に注ぎ込んで、走り続けた。
 あと15分。
 鬼童と打ち合わせしたタイムリミットまで、榊は頑張るしかない。
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