かっこうのつれづれ

麗夢同盟橿原支部の日記。日々の雑事や思いを並べる極私的テキスト

連載も新刊もラストスパートです。

2009-10-25 21:41:13 | ドリームハンター麗夢
 この2月から連載を始めたかっこう作麗夢同人小説「アルケミックドリーム 向日葵の姉妹達」も、いよいよラストスパートです。原作ではあと1章で終わりなのですが、この連載ではこれを2つに分け、全17章構成で作りたいと思っています。400字詰原稿用紙にして残り60枚少々。今年中には完結したいと思います。

 それから、冬のコミトレ新刊小説の原稿、今日ようやく最後に付け加えた後日譚を脱稿し、一応の完成を見ました。後は全体を改めて見直して推敲を重ね、完成度を上げて行きながら、挿絵をお願いしている妄想畜さんと相談しつつ、自分でも何枚か描いてみるつもりでいます。
 一応題名(案)も、「白魔の虜囚」を最終候補として決めました。ほかにイイのを思いつかなかったら、これで行くことになるでしょう。
 予定としては、そんなこんなを11月一杯続けて、12月に入ったら編集作業を開始、年内には本に仕立てるつもりで作業を進め、年明けのコミトレに間に合わすつもりです。もちろん製本は、いつもの通り自宅オンデマンド印刷・製本でやります。手持ちの紙のストックや作業量を考えると刷るのは多分30冊くらいでしょうか。これまでの本より若干ページ数が少なめになる分、色々趣向を凝らして楽しめる本にしようと計画しておりますので、請うご期待、と申し上げておきましょう。
 後はほぼストックの無くなった既刊をどうするか、ですが、ブースの飾りつけはポスターやDVDやもうすぐ出るコミックスも使えますし、いくつか委託も呼びかけてみようと思っておりますし、本が新刊一冊だけでもそれほど寂しくなることも無かろうと思いますので、既刊の増刷はしないつもりです。
 さて、今年も残り2ヶ月。コミトレまでならあと84日。久々の同人誌作りに気合入れて行きましょう!

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15 五分間の攻防 その6

2009-10-25 09:15:00 | 麗夢小説『向日葵の姉妹達』
 既に所定位置について2分が経過した。
 外部モニタには、さっきからじっと動かずにいる円光の姿が映っている。
 目の前の地面に持参していた錫杖という棒を突き立て、一心不乱に何か呪文を唱えているのだ。
 外見上はただそれだけなのだが、ドラコニアンIIに搭載されたもう一つの目、精神波センサーは、今、異常なまでに盛り上がりを見せる円光の別の姿を映し出していた。
 それは、さっき円光を見つけてその危機を救ったときとは全く桁違いのエネルギー量である。そのエネルギーが、鬼童が改造したシステム内に導入され、見事な五芒星を描いて徐々に、だが確実に、更に凄まじいエネルギーを生み出そうとしていた。
 その有様にようやく気づいたのか、ドラコニアンIIの外部モニターやセンサーには、無数と言っていい夢魔どもの蠢く様も捉えられていた。
 だがもう遅い。
 既に五芒星は充分な結界を生み出し、下級な夢魔を排除するだけの力を蓄えつつあった。
 もう、奴らが何匹かかってこようが、円光の結界陣を突破して、攻撃を仕掛けてくることはない。
 やがて、円光が複雑に組み合わせた手をまた組み替え、遂に一声高らかに宣言した。
「秘法! 夢曼陀羅!」
 同時にケンプも、心から神に祈りを捧げた。
 どうかシェリーを助けてもらいたい。
 たとえ自分の命に代えても、あの娘だけは救って欲しい。
 その思いは小さな力ではあったが、確かに五芒星の結界に乗って、円光の法力により合わさっていった。
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15 五分間の攻防 その5

2009-10-25 09:14:00 | 麗夢小説『向日葵の姉妹達』
 最後の男が、腰くだけにがくんと落ちた。
 榊の先制攻撃から始まった1対10の乱闘劇は、ものの2分もかからぬ内に、圧倒的不利なはずの側の圧勝によって幕を閉じた。
 真野昇造は、まだ信じられないという目を思い切り開いて、この光景を眺めている。
 だが、榊を知るものならこの状態は寧ろ当然と言えた。警視庁きっての荒武者の異名をとり、単なる肉弾戦なら円光すら凌ぐかも知れない猛者なのである。多少武術を納め、筋肉を鍛えたくらいの男達では、何人束になろうが榊に敵うはずがなかった。
「さあ、貴方も早く避難した方がいい。魔物どもが直にやってくるぞ」
 榊は脱ぎ捨てたコートを拾い上げると、呆然としたままの老人に言った。
 正直、この2分程の間に夢魔達が襲ってこなかったのは、本当に僥倖だった。
 榊はプジョーに歩み寄り、急いでここを離れようと考えた。この気絶した連中のことを考えても、自分達がここに長居するのは得策とは言えない。
 しかし、榊の希望はまたも叶えられなかった。
 プジョーのドアに手をかけようとした榊の背中が、凄まじい殺気に総毛立ったのである。
 振り向いた榊は、自分を睨み付ける老人の姿を凝視した。
 これまでついぞ覚えなかった威圧感をその視線に感じ、榊はドアから手を離すと、真野昇造にまっすぐ向き合った。
「佐緒里は、佐緒里は儂の孫なんじゃ!」
 突然、真野昇造の身体が2倍に膨れ上がった。
 腕も足も胸も、急激な膨張に衣服がついていけず、あちこちで裂け、引きちぎれていく。
 顔も好々爺然とした皺だらけな肌が急激に張りを取り戻し、そのまま色までどす黒く変色していった。
 手の爪が鋭く鉤状に伸び曲がり、耳元まで裂けた口に、鋭い牙が生え並ぶ。
 それは、ここまで対峙してきた夢魔どもの姿に他ならなかった。
「真野さん、貴方夢魔に取り憑かれていたのか……」
 血走った目が榊を見据え、大きく開いた真っ赤な口が、獰猛な唸りを奏でて榊を威圧した。
 孫かわいさの余り、孫に憑いた夢魔に、自らも侵されてしまったのだろう。
 もうそこには、孫を溺愛する老経営者の姿はどこにも残っていない。
 榊はもの悲しげにすっかり変貌してしまったかつての老人に、ゆっくりと麗夢の拳銃を向けた。
「グギャァオゥッ!」
 奇怪な咆哮を上げて、変わり果てた真野がまっすぐ突っ込んできた。
 榊は充分近づいたところで、引き金を引いた。
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15 五分間の攻防 その4

2009-10-25 09:12:30 | 麗夢小説『向日葵の姉妹達』
 戦いはやはり圧倒的だった。
 所詮下級夢魔如きでは、麗夢、アルファ、ベータの三位一体に付け入る事は出来ないのだ。
 だが、麗夢は普段とは違う、妙な違和感を覚えていた。
 普通、夢魔は統制の取れた動きなどしない。
 下級夢魔ほど、とにかく数を頼んでひたすら突っこんで来る事しか知らないものだ。
 だからこそ麗夢達も全力で迎え撃ち、その悉くを返り討ちにして、極短時間で制夢権とでも言うべき秩序を回復するのである。
 だが、この夢魔達は、うち払ってもなぎ倒しても、一向に数が減った気がしないのだった。
 そればかりか、どうやら無理押ししてこない。
 普通はまるで無秩序に塊になって剣の前に飛び込んでくる彼らが、信じられないことに幾つかの集団に別れ、互いに連携を取りつつ左右上下とあらゆる方角から麗夢達を狙ってくる。
 その上、決して深入りしない。
 全滅するまで突撃を止めないのが普通なのに、ちょっと麗夢達に当たるやたちまち身を翻して逃げ散ってしまう。
 間髪を入れず次の夢魔の一団が襲いかかってくるので気づかなかったが、今や、夢魔達が高度な指揮系統を保ちつつ、ある目的を持って麗夢達に向かってきていると考えるしかなかった。
 その目的とは、どう見ても「時間稼ぎ」以外にあり得ないのである。
 佐緒里=ROMは、宣言通り麗夢をこの夢に釘付けにし、その間に本体である肉体を破壊しようと、動き始めたのだ。
 それにしても、死夢羅の他に、このように夢魔達を操るものが現れようとは、麗夢には意外でもあり、恐ろしくもあった。もちろん負ける気はしないものの、これからこのような敵が増えると、やっかいであることには違いない。
(それはこちらの思惑通りではあるけれど……)
 時間稼ぎは麗夢の目的でもある。
 後は榊の手腕に期待するより無い。
 麗夢は一体を横様に薙ぎ払い、返す刀にもう一方を突き殺しながら、チラと背後の二人に目をやった。
 どういう経緯があったのか知らないが、シェリーはすっかりROMを信じ、その腕の中に抱え込まれている。
 ROMはROMで、シェリーの身体をしっかり抱き、時折流れ弾のように飛んでくる夢魔からガードしているようだ。
 どうやら下級夢魔程度ならROMにもどうにか出来ると見えて、今のところ二人とも無事である。
 麗夢はその事に安堵しつつ、このROMをどうしたものか、思案せざるを得なかった。
(生かすのか、倒すのか……)
 目の前の佐緒里=ROMは明らかにバグが修正されないまま夢魔に汚染されてしまったプログラムである。もう消去以外に手はないだろう。
 だが、後ろのROMははたしてどうか。
 シェリーの夢に入るとき、途中からではあったが、シェリーを巡る一幕は麗夢も見ている。その中で、このROMは確かに自分の欠点、屋代修一のプログラムミスで生じてしまったバグを、自ら修正しようとしているように感じられた。
 失敗をバネにより良くなろうと言うのは、人間でも同じ事だ。
 即ち、このROMは一段と人間に、屋代修一が望んだものになりつつあると言えるのではないか?
 でも、既にその肉体がこの形になってしまった今、彼女を助ける術があるのかどうか、麗夢にも明確には判らなかった。
 鬼童、あるいはヴィクターなら何かいい知恵があるかも知れないのだが。
 麗夢はひたすら考え続け、こうなったらなるようにしかならない、と思い切った。
 中に充満した瘴気を消し去れば、あるいは元の通りになるかも知れない。
 そうなればなったでやっかいなことには変わりないが、それでも良いと、麗夢は思った。
 こうして戦いはなおも続く。
 その終止符が打たれるまで、後五分もないはずであった。
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